妹柱と魔術師と 4
聖櫃騎士団の働きかけは、知識を与える。
知識が浸透し、それぞれの世代や時代で芽吹いた成果を記録して、回収することにある。
ざっくり搔い摘むと、こんな流れになった。
「搔い摘み過ぎだが、まあ、合っている」
応接間に圧が掛かっているので、魔術師は退室し。
アーサー卿とポロロン騎士が残った。
「知識の形はそれぞれの時代で印象が変わる。まんま果物であったり、書籍であったり、杖、宝石、或いはモニュメントのようなものだな」
知識は印象操作された物体に触れると、流れ込んでくる仕組みだ。
また、ただ与えているわけではない。
受け取る側にも相当なリスクがあるので、十分に覚醒していることが条件になる。
「まさか?!」
足首をもって丸く閉じてたマディヤ。
自らの封印を解いて、椅子の上に立ち上がった。
で、バランスを崩し頭から卓上へ落下した。
何かがへし折れる音が響き。
卓が宙へ浮く。
卓上にあった果物や、水受け、水差し、まあ、いろんな物が飛んだ。
不思議なことに。
こんなに盛大なハプニングが起きたのに。
どれもこれもがスローモーションで見える。
魔法みたいな現象がキレるのも一瞬だった。
「神さまの方は大事無いか?!」
燕尾服の少女、ナシムが介抱している。
流石に折れたって思うほどの音だったけども。
「いたーい!!」
で済む?
そんなで済むのか?
乙女神の妹、凄いな。
◇
「で、何処まで話したかな」
十分な覚醒が必要――血族ってのは、これらの情報媒体に対して耐性がある血統を指している。
耐えるってのも面白い表現で、実のトコろそのままの意味にも。
アレキサンドリアの大図書館のような情報量が短時間に脳を占めるので、そう呼ばれた。
「結社を組む連中は、その血族の子孫たちだ」
目覚める知識は様々で、見たいものを取捨選択できる。
時代にそぐわない高度な医術を極めたい欲求なら、医療知識とか。
「全知全能も夢ではないが、リスクは相当に高くなるな」
マディヤを見て、アーサー卿がはにかんだ。
神さまになりたいと思うものは少なくはないからだが。
「では、協力とは?」
「それな、基本的には記録するとは監視しているんだが。監視対象者が店じまいを始めた」
は?




