妹柱と魔術師と 1
「ふん、血の気の多い奴らだ。そんな殺気駄々洩れだと、こちらが用意したセキュリティが反応する」
庭に鎮座してたガーゴイル石造が変な音を立てて動く。
庭の隅から順繰りに、正門へ向けて熱い視線が注がれて――いや、石造の目が真っ赤に燃える、侵入者らを追い出せと震えて嘶く。
そんなナレーションでも付きそうなほどに、これ、めっちゃヤバいんちゃうの的な。
ほら言わんこっちゃないなんて声が風に乗った。
屋敷の中へ早々に逃げ戻る騎士。
あ、あんた戦わないんだ。
恐らくはそう皆が思った。
当然、あちら側の仲間もだ。
「客人だぞ!!」
は、今更、通じそうにない。
◇
さあて。
動き出したセキュリティはとうとう臨戦態勢に入った。
顎の下の当たりに輝く宝石と一緒に、何か絵文字みたいなもんが見えた気がした。
『おお!目聡いな』
騎士のくぐもった声が窓ガラス一枚を通して響き渡る。
そんな声音はいいから、助けてくれない?
『その宝石を壊せば石造も壊れると、魔術師のボスも言ってた。頑張って壊してくれ』
やっぱり手伝う気はないようだ。
「それなら実演を!!!」
マディヤがたわわごとにぴょんぴょん跳ねて、叫んでる。
これが彼女の権能『かわいらしさ』だが。
騎士には浅かったようだ。
クリティカルに至らず。
『腰に提げた剣は飾りでな』
館の内外から「飾りかよっ」って声が滲み。
『わたしの弓とでは魔法生物との相性が悪い』
逃げてるだけだろってのも聞こえた。
どうも身内からも騎士の立場は狭いようで。
それにもめげない彼の心意気は買いたいところだが――。
「それでも実践を~」
マディヤが甘い声音で騎士を誘惑する。
これで落とせないとなると、さすがに現職の神としての性能が疑われるので必死なのだ。
『うむ、女の子そこまでお願いされたら、騎士の沽券に』
いや、それは。
いやいいや、言うまい。
――ポロロロン...ポロン......ロン。
弓の弦を指で弾きながら、騎士が現れる。
んー、それは弓だよね?
――ロン、ポロロン、、、ロン、ポロン...
ガーゴイルこと、魔法生物たちが弦で奏でられる音に耳を傾けてる節がある。
まあ、たぶんいい音色だとは思うけど。
『さあ、諸君! 今のうちだ。宝石を砕きなさい』
怪しい弦の音色で惹きつけて。
ゴーレムであるガーゴイルのセキュリティはこうして突破されたのだ。




