聖国の郊外 5
四色の枢機卿は、序列によって権力差異が生まれている。
巫女を支え、また次代の巫女教育にまで携わることができる『聖一品』という冠は。
間違いなく権力の頂点だろう。
巫女=女王だという『セーライム』の統治機能も鑑みると絶大な権力だ。
例え王室の下に議会があるとしても、人の理までの話となる。
上手くできている。
宗教国家だから、神の代弁者とされる巫女は別に血統でなくてもいい。
血筋、系譜、始祖からの繋がりがスピリチュアル以外にもあれば、尚、いいってだけで。
女王や国王を現王室から出して継続させるよう求めてくる“圧”はある。
それらの異音を弾き返すのが、
巫女による『信託』というものだ。
残念ながら、あたしの知っている乙女神には自覚と言うか、記憶がない。
世界に干渉する時は、熱心に作ってる箱庭に異物が混入したときだけだ。
チャンネルを開いて声が断片でも意味が通じそうな、
頭のネジが飛んでない子供に託す。
教会って窓口があるのにまったくの無視。
「なんで使わないと思う?」
あたしの腹の中にある乙女神は、あたしの声音で皆に問う。
唐突のようで。
セルコット・シェシーのすることだ。
皆、疑問に思うことなく。
「やっぱり正教会、嫌いとか」
幼稚、発想が幼稚。
「いや、まあ嫌いだけど。あこの巫女さん可愛らしくて幼児体系なおチビちゃんなんだけどね」
ふんふん。
「パスの出力口がさ、長年のゴミ?みたいのが詰まってて流れが悪いというか、こう拡張するゴムホースめいたもんじゃなくて管の方も硬くてね。小さな出口だからこっちが大声出しても、っぜんぜん気が付いてくれないんだよね。あれ、早晩にパス閉じちゃうと思うわ」
血栓か?!
いあさ動脈硬化か!!
パスにも老廃物が溜まるんか。
驚きの余りに、あたしは自分の腹に叫んでた。
この奇行は生暖かくそして、微笑まれた――みんなに。
やだあ~ みないでよ~
蒼の魔女が険しい表情になる。
「これが... えっとパスが詰まってて、血栓ができてるとして。今までの神秘回収や宣託とか、神の声というのは嘘?!」
「おっと、短絡手に捉えないで。勇者の召喚と派遣に邪教徒たちの暗躍による神秘の破壊もしくは収奪に抵抗するよう各地の巫女に下命したことは間違いない。正教会の総本山にも通告したけど、受信しなかっただけの話ね。今の受信は、巫女がパスを通じて」
乙女神の意味深な言葉。
「まさか?! 盗聴!」
そだよーってあたしが発した。
いあ、あたしの声で乙女神が。
ややこしいなあ。
「巫女の信託には無かったんだろうけども、乙女神という柱の他に強い信仰力によって『神が降誕』した。紅のパンツの神様だね、赤ん坊でも...(眉間を抑え)なんか栄養がいいのかすくすく育って、1歳半っぽく見えるけど、この子は正教会にとって最大の神秘だ!!」
故に。
後輩が狙われてるのではなく、幼い神が対象になっている。
赤子を連れた一行の捜索。
および路銀の使い方に法則を見いだされて追跡され始めた。
「で、さあ」
「あん?」
皆がどう聖国から離れるかを考える中。
あたしはひとつ重要なことを思い出した――「シグルドさんたちと合流する?」だ。




