聖国の郊外 3
刺客の一人ようやくゲロってくれた。
真面目な話、あたしには尋問としての才が無いように思う。
いや、ほんと。
炙ることしかできないもん。
「ほら、脂がしたたり落ちてきたねえ」
愛娘に刺客を炙ると、肉が焼けると教え込む。
うん実にいい香りだ。
そうだ、お昼はベーコンにしよう!!
「こら!!」
すっ飛んできたのはパパ。
いあ、もとい後輩だ。
幼い神の保護者だと主張してた。
あんなに明後日を向いてても、そこは主張するんだ。
ズルイ子だよ。
「――この刺客が言うには」
路銀事情を正確に把握されてる当たり。
財布の中身に聡い者が裏切者か、或いは間者で間違いない。
ただ、ここにあるのは身内だけだ。
「助命をエサに助けるつもりが無かった訳だけども、だからと言って炙り殺すとかエグくないですか? 先輩の火力、えっと暗殺者殺しの金色のサイクロプスでしたっけ?! その肩書に恥じない仕事ぶりには脱帽かなって思うんですけどね?」
あたしの背後にある肉塊は焼け爛れた物言わぬもの。
焼き肉だ。
「あー」
な、なに。
あたしの指をぎゅっと掴む幼い神も驚いてた。
「なに?!」
「言い方ー」
呆れた風だが
「言い方があるー!!!」
「後ろのソレ炭化させちゃってください!」
あーもう。
いい匂いになったのに。
◇
後輩、紅と同行した当たりか。
いや、それ以前から目星をつけられてた可能性があるとして、順に転々とした宿を逆走した。
広げた地図の上に銀貨を乗せて。
「ここで贅沢をして、銀貨12枚と」
紅から「えー」なんて声が挙がった。
と同時に、同期の蒼へ襟首掴みにとびかかる。
「わー、どうどう」
ミロムさんが止めて。
あたしが彼女のたわわを揉む。
これ、案外、落ち着くんだよね。
「贅沢で反応したの?! それとも土地で?」
「どちらも違いますよ。人気で泊まれない宿屋で反応したんです!! そもそも貴族でも枢機卿だって予約者が先だからって部屋を開けてくれることが無いって話の豪華な乙女神の神殿級ホテルです!!」
ホテル、ホテル?
宿屋じゃないの。
「いあ、乙女神の推薦だし、聖女だから、かな」
ぶっちゃけると、まあ。
悔しがる後輩。
敬う後輩もある。
「そうだったー! 先輩は聖女に選抜されてたー!!」
だね。
なんか悪いことしたかな。
いや、其れで目をつけられたのか。
超? 豪華で枢機卿さえ袖にする乙女神の眷属宿屋、ホテルから聖国に入国した、あたしたち。
それが紅の修道女と合流したのだ。
灰色が黒になった瞬間だろう。




