聖国の郊外 2
後輩の傍にあった子が、急にあたしの方へ走り寄ってきた。
『まーま』
と、驚きの言葉を吐いてた。
『まーま、まーま』
おいおい。
後輩に目を向ける。
紅は口笛を吹きながら、明後日に向き直してた。
「おい!」
幼女はあたしの傍から離れないどころか。
よりにもよって膝の上に載ってきた。
ミロムさんも驚きの出来事。
◇
教会総本山から夜逃げのように飛び出した紅は。
御神体が祀られてた祭壇と共に落ち延びたところだという。
「これ、落ち延びたと言えるの?!」
聖王都からは、僅かに10里くらいしか離れていない。
都の中に入れないだけで、影響下の街や村には入城が可能だった――いくつかは蒼の魔女がある為、顔パスで成立しているシーンもあった。
それは、そうと。
後輩たちの地位が特別である今、なるべく多くの情報を手に入れる必要があるのに。
「その言い方は...」
紅が邪魔だと言っているようなものだろうか。
彼女の手を取り、同僚で同期で、同級生の蒼が「心配しなくていい、こっちには兵器がいるじゃない!!!」こらこら、幼い神に何をさせようとしてるんだい。
あたしの洗濯物から生まれた神さま。
癇癪もちとの話だったが。
あたしの膝の上でよく寝ている――あ、前髪が。頬なんてぷにぷにで丸くて、可愛いですねえ~
「セルが、親ばかだった!!!」
あー?!
思わずドスの効いた声が出かかった。
聖王都の衛星都市くらいまでしか進めずに、時々後退も余儀なくされる。
白の枢機卿ら一派と思しき刺客が来るからだが。
それも昼夜問わずとなると。
慣れが生まれるようで。
後輩を囮にすると、
『こうやって新鮮な肉が手に入る』
食べるわけじゃない。
よく囀る小鳥のようなものとなるからだ。
代償は助命である。
「街を転々としているのに、しつこいと思わない?」
尋問担当があたしの番だ。
これは持ち回りで。
「そろそろ路銀が底を尽きかけたんじゃ?」
ああ、そういう。
渋った覚えはないけど。
売られたわけか。




