白の狂信者たち 6
今のところ、狂ってるのは後輩だけだな。
パンツに夢中になりやがって、神格化させ、雇用主に逆恨みで天罰を与えた。
黒焦げになった白の派閥んとこのは――
アレは自業自得って片付けられるわけだけども。
狂信者というレッテルは張れない、わな。
こんな後輩が居る以上は。
◇
乙女神の計らいと言うか。
半ば無理にだが――マディヤ一行は、旅商隊の偽装をした状態で海を越えて大陸の端に放り込まれた。
それこそ物理的な距離をも無視する御業による跳躍という魔法に由ってだが。
召喚魔法とは違って、いち魔法使いで同じ現象の再現でもすれば、如何に困難な仕事であるかを理解できる。
先ずは、目標地点と今ある座標を寸分違わずに入れ替える作業がある。
理論上は同じ高さと直線で結べるような状況が望ましい。
失敗しても、少々高い位置から落とされるか。
最悪、川か湖に落ちるくらいだ。
「観測者が必要なのでは?」
後輩が冴えたことを言う。
流石、教会の学校にも通い直した魔法使いだ。
『そ、故の神視点』
俯瞰できるから成立する。
神さまならば『見えざる手』でも干渉できるだろう。
次に、切り取った空間の交換だ。
座標の変更と共に瞬時に移動するので対象物の時間は、ゆっくりと流れるようになる。
ここに光があるとすると、観測者の目には止まっているように見えるという。
難しくて分からないんだけど。
『バスラまでの距離は、約4千キロメートル――知る限りの大雑把な目測で、今、指で測ったから多分もっと距離があるかもしれないけど。東から西へ移動する太陽が何日も昇っては沈むを繰り返すような長旅だと思うんだよ、そんな時間を跳躍出来ると思うかい?』
感覚的に一瞬で移動するんだけど。
出発地が早朝だとしても、到着の頃は陽が昇る前の...
或いは陽が昇り切って昼頃に現地入りするかもしれない。
で、あれ?
マディヤたちがバスラへ行っても大丈夫のかとか。
「これは蛇目のアイヴァーさんが仕入れた情報ですから。旅商のままでも接触するというのなら話に乗ろうと思ってるだけです。個人で空間跳躍を行った技量とかその辺りの諸々を見てみたいと思う好奇心も確かにありますから」
と、マディヤは(隊商)納屋壁に向かって会話している。
空間転移は成功し、バスラの都が見える寸での宿場町に入って――ご休憩中の真っ只中。
妹柱は牛の乳しぼりの最中で交信を行って。
夢中になったら、壁に向かって話しかけ、嗤って、転げまわってたりもした。
まるで痛い人だ。
「うん、じゃ。爺ちゃんと師匠にヒルダは帝国に帰還、一時的に」
教会の総本山に乗り込むには物騒過ぎるメンツだと思った。
いや、これは後輩ふたりの意見が重なった結果だ。
ミロムさんは...
「私、メイドだから」
「あ、うん、そうだね」