白の狂信者たち 5
セーライム聖国の4人の枢機卿――それぞれの守護、統治するべく派閥に合わせたローブを着る習わしだけども、女神は嫉妬深いという理由で、教会の最奥の出入りは男子禁制となって4世紀。セーライムと、教義の起こりは3世紀半という話をしても矛盾が大きいのは、神秘の一つだという。
まあ、たぶん。
前身とする組織があったんだと思う。
それこそ各地に残る遺構や、遺物に、口伝による神々と人々の戦いの話まで遡るとして。
それは、それ。
これは、これ。
セーライムに後輩があるんだよと、流れて。
急にご機嫌斜めな、妹柱。
『そこ、わたしが目指すべき地だったんですよ!!』
なるほど。
メガ・ラニアの騒動にもひと段落点いた後。
組織が本格的に解体を望むとばっちりに巻き込まれた――展開を考えるに、マディヤののほほ~んとした緩い記憶から、一番、怪しそうな地域への突貫を試みる予定だったという。
それなら、島大陸の端から西へ歩を向ける意味が分かる。
だが、それだけではない。
『蛇目のアイヴァーさんが仕入れた不確定要素があります』
ふむふむ。
皆が息を呑む。
外空間では、汚染された湖の浄化魔法が彼女の下半身にちくちく当たってた。
汚染元凶なので浄化魔法の攻撃対象であるからだが。
「もう、鬱陶しい!!!」
神の癇癪で信者が消失。
以後、浄化は中止された。
『どったの?!』
あたしの問いに、妹柱は――「なんかチクチク痛かったんで、殺虫を」と。
これの顛末は後に、シグルドさんから知ることになる。
まあ、この時は「痒くなる前に薬を」だった。
『どこからにナリます?』
『うーん、不確定要素から?』
そうそうで、会話が戻される。
島大陸の西。
今では魔神の傷跡で、海岸線が殺風景になってしまったのだけども。
『――バスラ!?』
ナーシリーヤ藩国第二都市バスラ。
交易都市であると同時に、各地へ船旅が出来る巨大な港湾都市でもある。
各地へ続く定期便の本数は多く、1日に最大で10か所もの地に向けて船が出るのだというのだ。
余りの多さに。
『7日を賭して、半球分に渡りをつける。抱える人口は世界最大級、往来者の数も定住者の倍近いという盛況ぶりと聞く。私も四半世紀に立ち寄ったが、活気の絶えぬ豊かな都市だったと記憶している』
妹柱の放浪記という記録だ。
冒険者ギルドを出版元として著者を替えて出版されてた。
遠出のバイブルって話も耳にする。
『あーそれ、あたしも読んだことあるー!!』
後輩が「当方がプレゼントしました」といい。
あたしは半分まで読んで鍋敷きにして捨てたと吐露した。
マディヤがぶちキレるまで時間は掛からなかったが。
『バスラに何が、あるの...』
離れていても天罰は下る。
あたしは、へそ出してたトコに強烈な、グーパンを貰った。
おお、容赦ねえ。