白の狂信者たち 3
その日から、あたしのパンツが神格を得た。
まだ生まれたばかりなので、妖精に少し産毛でも生えたようなものだけども。
『先輩のちょっと太めの抜け毛も、一緒に奉じたので』
紅の修道女こと、あたしの後輩がべつの神殿の別の神像の前で。
柏手を打って「あー」でも「うー」でもない祈りを捧げる。
天界へ誰かに通じて欲しいなと思ったら、それは祈りでいい。
ただし、誰それに『届けぇー!!!』って強い気持ち、感情が乗らないと繋がる物も繋がらないんだけども。
天界の避暑地にあるあたしと。
島大陸の端で、蛇女と戯れてた妹柱にパスが繋がる。
「「あ! 来た来た!!」」
運命の三女神こと。
世界の主神・乙女神と、魔女、竜女神は三人でひと柱扱いでもある。
自殺して転生しても、ね。
神の生まれ変わりとして再登録されたかも。
「今、ピーンと来た!!」
唐突に交信が繋がったきがした。
◇
後輩の祈りは続く。
祭壇の隠し場所は熟考を重ねて、灯台下暗しとした。
なんてことはない。
乙女神の祭壇の中に隠して。
信者の強奪に賭けた。
『悪、認定じゃないか!?』
後輩には一応、注意したけど。
ストレッチ中の乙女神さまがこの交信に割って入る。
『横から失礼だよ!』
おお、礼儀正しいっす。
『おい、こら人間!!』
『人間じゃないっス、当方はエルフです』
乙女神に対しても物怖じすることなく淡々と。
いあ、前からたんぱくな子だとは思ってたけどね。
この子に怖い事ってあるんかな。
『心外ですよ、当方にだって怖いことはあります! お化けとかお化けに、お化けですね...あと、お化けです』
うん、お化けだけじゃねえか。
教会なんかお化け出るだろ。
同じニュアンスで、妹柱からツッコミが入る。
ま、盗聴ではなく聞こえたのだから、うん。
仕方ない。
『えー』
これは筒抜けぇーの方の語尾の方。
『っつ、お化けが怖いなら、その、教会勤務辛いんじゃない?』
『心配してくれるんですか、先輩ー!』
ラブラブ~とか吠えてたが。
ふたりの女神に咳払いされた。
『いあ、ぶっちゃけると白いローブを着た白の枢機卿一派が怖いんで、普通のアレ。ターンアンデッドで消えるじゃないですか』
消えるんじゃなく浄化、浄化な。
後輩のはこの辺りのネジが飛んでるっぽい。
『だから浮遊してるのとか、魂魄燃やしてるのとか、あと、魔法もぶっぱしてくる悪霊なんかも~ あんま、気にならんですね。神聖魔法が通じるんで... ぶっちゃけるとポップする経験値の塊?!』
失礼な。
失礼な後輩だよ。
『死者に敬意を!』
ほら天界の主人もお怒りさ。
『ちょ、ちょ...ちょまてぇ~よ!』
妹柱が口を尖らせる。
今、涼んでる結界の湖の真ん中で、彼女はワカメをまとって――虚空に向けて腕を伸ばしてた。
目撃者にはマディヤさまがご乱心を!?てなひと騒ぎになっている。