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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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紅の祭壇

 後輩のひとり、紅の修道女は一足先に現界した。

 彼女の足が向かったのは、中央大陸・女神正教が本拠地『セーライム』。

 風光明媚な街並みと、高く聳えた城壁に囲まれた城塞都市の様相みせつつ、どことなく垢抜けた雰囲気というか、いあ、違うな。能天気すぎるきらいのある国民性で、市民だけが闊歩する市街地区を抜けた先の殺伐さのアンバランスが極めてきな臭さを放ってた。

 教会の尖塔を彷彿とさせつつ、それは要塞。

 囚人を投獄する監獄城もあって。

 町中が晴れ渡る陽光の下だとすると。

 城塞の真上には暗雲が渦巻いているような雰囲気だった。


 セーライムは宗教国家として他国に認知されている。

 逆に国内の市民は、女王を中心とした王家が国家元首として振舞ってた。

 これらのギャップを埋めるのが『正教』の存在。



 乙女神を三つ柱の融合神として崇めているわけだけども。

 これは時と場合によって使い分けられていた。

 獣人族のような亜人に受けのいい『竜を御する乙女』、魔術や妖術、神秘の秘匿が必要な時の『世界をいた魔女』、天界を統べる慈愛と豊穣をもたらす『主神』といった形と、捉え方はさまざまに違って行って。

 世界には類似したいくつもの乙女神が生まれた。

 もっとこのネタを引っ張ると、だ。

 世界のあちこちのパワースポットに建立された、何故か目を覆いたくなるような姿勢の前身像があって。

 これの膝を折って、前かがみになったり。

 手と腕で顔を隠す恥じらいのもと。

 両膝をきゅっと閉じて座り込んでる姿の状態から聖なる水が染み出ていた。

 これ、教会のまっとうな公共事業の一つ。




 目的は、ただ一つ。

 神の恥じらいで集客するためである。

 パワースポットなので、染み出た湧き水には特別な力が宿っている。

 傷口に濯ぐと、あら不思議とばかりに快癒するとか。

 腹痛から病魔に冒された者たちが、ひと口含むと病の痕跡さえなくなるものだという。

 疑う余地はないけど。

 出てくる場所がきになる。


 前に似た施設を見た。

 アレは枯れてたし、放逐されてから半世紀は経ってた。

 その神像のここからですと、後輩が解説してくれたけど。

「それ、スジ」

 あー!!!って唐突に大声出して静止され。

 これ以上はコンプライアンスの問題ですとか、プライバシーがと。

 まったく相手にしてくれなかった。


 いあ。

 そもそもソレを作ったのは教会じゃないですか。

 まー。

 色々あるだろうキナ臭さ満点の『セーライム』に戻った後輩。

 あたしと居る時とは装いも、目つきに、雰囲気さえもヒリついて立派な石畳の上をツカツカと――

 彼女の執務室へと足早に進む。

 時々『ごきげんよう』とか、らしくない修道女たちの定期な挨拶が飛び交う中。

 紅の修道女は無言で自室に飛び込む。



 複雑な仕掛けに、

 複雑な呪文、

 複雑で奇妙な踊りを舞うと、出た。

 隠し扉が、だ。


 ほら厳かに響く重く低い、石がすれる音だ。

「あった、大丈夫だ」


「ほう、そんなトコにありましたか?!!」

 後輩の秘密部屋と自室の際に立つローブ。

 蝋燭の明かりでは暖かなオレンジにも見えるけど。

「白の?!」


「紅さんが変なコトしてるって噂でしたもので。異端審問の者が神以外を愛するというのですか?」

 あちゃ。

 ついに祭壇が見つかったよ。

 それ、あたしの汚れものなんですよね。

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