セルコットの休日
あぢぃ~。
心の叫び、体に出る。
一度は現界を果たしたんだけど。
なんでかまた、
あたしは天界に戻ってた。
色々諸事情はある、諸事情はあるけど...
最もたる事情は。
現界した場所が悪かった。
北欧にて大暴れをして、過ごしやすかったのもあったんだよ。
これが一番だけど。
例の島大陸に戻ってきたら、さ。
クソ熱い夏季に入ってやがった。
◇
ミロムさんに、ヒルダさんから。
「現界してどうよ?」
的な訝しげに問い質され、ありのまま正直に。
「マジか!!」
島大陸はこの星の南側にある。
季節柄、これから夏季まっさかりになる頃合いなので。
やつれた表情になるのは仕方ない。
島大陸の中央部は、平原と湿地帯が広がってた。
と、すると。
「高温多湿か」
魔王ちゃんが呟き、後輩二人が呻くように項垂れた。
これが経験者の姿。
湿気が半端ない。
まとわりつく空気に、下着が肌に密着して動きに束縛感がある。
こう、さらっとした空気の地域に行きたい。
『で、何? 避暑地代わりに使おうってこと?』
ひと段落ついた乙女神が床に直、座りしている。
ストレッチだという。
「あん」
可愛らしく答えてみた。
ま、これでどうこうしてくれるほど、神さまが優しい訳じゃないんだが。
『いつかは帰るんだから、今のうちに慣れてた方がよくない?』
そりゃそうだ。
理屈と... 我儘を正そうとしてくれてる神の善の光は白く、眩い。
こんなダメなエルフに向ける優しさでもない気が。
『そりゃ、かつては可愛い妹だからね』
今は可愛くないと?!
『その片鱗はどこにもない。むしろ、憎たらしく思えてくる』
んー。
姉に対する敬う心が足りないまで言われた。
元の魂にもともとない要素のような気がするけど。
そこは、あたしの胸の内にそっと仕舞っておく。
「ほら、高温多湿の中に魔王ちゃんを放ると、暴れるかも?」
魔王ちゃんほどの実力者を出汁にする。
「え? わたし?!! わたしなら大丈夫だけど???」
ん。
んん...
暫くあたしとマジのにらみ合いにあって。
彼女がしょんぼりしながら、折れてくれた。
魔王ちゃんは悪くない。
『ぢゃあ、特別、あそんでいっていいよ』
言質をいただいた。
◆
あたしたちが避暑地に引き籠もる頃。
もう一人の妹神の周りがざわつき始める。
紫水晶の最後の幹部の細やかな抵抗ってヤツだね。