ここから、今、伝説がはじまろうと 3
ヒルデガルドには特殊なスキルがある。
先述したように布面積が小さく、露出する肌が増えていると身体強化、耐性のアップ、弱体への抵抗力が増して、パラライズ、スタン、チャームにバーサークへの状態異常に対する抵抗値も跳ね上げて、強靭になるという。
脱いじゃ、ダメ。
脱がないけど、エロくない露出加減という条件が重なると。
これらのチート能力が発言するという。
「いやーだー!!!」
まただ。
また、ヒルダが駄々をこね始めた。
「これもう、裸じゃんよ」
似ても似つかない、はっきり言うと他人なのに意識下では自分自身のように思えてしまう。
ヒルデガルドの特殊性癖。
いあ、違うか。
一見すれば、おっさんだ。
四角い顎に筋肉隆々とした見事な逆三角形の上半身。
くびれた腰に、小さなお尻。
妊娠して出産時は、帝王切開になりそうな未発達具合――「うむ、ちょっと無理があるか。ヒルダに少し寄せて、腰は丸みを... いやいや、こいつの腰は他の種族を興奮させかねない丸みがあるからなあ。貧相なでいうと、セルくらいのが」
魔王ちゃんの呟きがですね。
あたしの耳にも届いてるんですよ、それはそれで失敬じゃあありませんか?
◇
伝説の英雄譚にはいくつかのアバターが用意された。
今後、世界各地に放たれて。
背景のストーリーと共に各種族に語り継がれていく者たち。
一つは、鋼鉄のガントレット。
氏族はまだないけど、この後に中央ナーロッパにおいて救国の英雄として、再びその通り名を響かせることになる者。
彼のスキルは――だ。
一つは、緋色の甲冑。
小人妖精族と、幻獣ヒポグリフが対となった騎獣士。
戦場の花形になる職業のようだけども、流行の起伏が激しく、氏族と共に歴史の表舞台から消えたことがある。
とか、まあ。
いいかそんなこと。
あとは...
そうそう白銀のレギンス。
ハイランド王国出身の戦士階層にある氏族から選出されて、拝命したんだけども。
目を離したら、因子の行方を喪失し、純血種から混血のエルフにスキルが発現してしまってた。
こうしてみると。
放置もダメってことになるね。
「そりゃそうだ。ここまでは想定内!! 各種族ごとに1ないし2名の英雄を囲うことが出来るんだけど。管理しやすいように手元に置き続けると」
と?
「血の病を患う事になる」
近親が多くなってしまう血統の病気だ。
戦闘系スキルへと昇華した英雄たちの立場は、それこそ決戦兵器そのもので。
救国の英雄となる“鋼鉄の腕鎧”は一呼吸で、格上の魔物でさえ両腕の拳で、粉砕できるような爆発的な超ド級の攻撃スキルを得ていた。
まあ後は。
英雄因子の成長深度にもよるかも。
これ、召喚勇者のステータスがベースになっている。
乙女神も深くまで考えなかったツケなんだろうね。
各種族が化け物を飼ってたことになって、ちょっと物騒なんだけど?!
◆
そうそう。
中央アジア方面、紫水晶の宗主が心血注いで世界帝国を作ってたと。
乙女神から聞かされた時は『は?』なんてアホ面見せちゃったけども。
『いつもの表情なんで今更ですけどね』
あたしは咳払いをしてごまかし。
生暖かい視線を向ける乙女神があって。
『だから、言ったでしょ? 邪な考えの気配を感じたので、セルの2個目の隕石ですけど』
あたしのは落花生が1つなんだけど。
『2個目はいずれ“イス”と名乗る帝国の礎になる為に、耕しておきました』
うん。
落としちゃったんだよね、其処。
とても甚大な被害が出たんだって話。