にゃはは~ 落ちろ、落ちてお願い 2
ん? んんん!?
「セル、煩いよ」
魔王ちゃんから怒られた。
乙女神の『ぐぎゃー! 神眼がぁぁぁぁ!!!』って大袈裟な叫びの横で。
あたしは空を見上げながら唸ってた。
んー!!!
ってな具合に。
「何、セル? 発情したの???」
魔王ちゃん、あたしはいつでも発情期だから。
そんなんで唸らない。
違うって。
今、ぴーんと来たんだよ。
こう。
「セル、ステイ!!」
あ、はい。
まあ、いいけど。
ステイしたら家、何処かなあでウロウロ後方に下がっていきますが。
「ミロムさん、捕まえて!!」
あれが逃げる。
そんなあ~
◇
燃えて溶けるモーさんに。
英雄のひとりが『山砕きぃぃぃぃぃ!!!』なんてスキル名を叫んで飛び込んでた。
動かないのをいいことに自分勝手な。
その刃は確かにモーさんに届いてた。
ただ、同時に金属音にも似た甲高い音のあとで、あたしらに向かってキラキラ光る何かが飛んできたのは見えた。
戦場と後方の指揮所とは相当な開きがある。
その開きの中段列に仮の詰め所があって、治癒士の方々スタンバイしているのだ。
あたしの元気が出る世界蛇の漬け酒もそこに置いてあった。
そうそう。
飛んできたのは折れた剣の先で。
振り抜ききった英雄のその後だけど――『今着地を確認!!』観測兵が光信号で、早急に退去せよと知らせてたんだが。
彼は凄まじいまでの脳筋だったのだ。
勇者の権能はあたしの炎のまで無効化されていると分かったわけだけども。
その試みに対して英雄の死は軽かった、プチっと。
ああああああああ。
これ絶対に悪夢になるパターンじゃないか。
『――踏まれました』
見てりゃ分かる。
「なあ、セル?」
ん。
魔王ちゃんの細い指先が、あたしの首元を這ってくる。
これどこに向かうのかな。
ドキドキしてたのがバレたかなくらいに、やや妄想しててですね。
「さっきの発情期の事だが?」
「発情期はいつものこと! 今に始まったことじゃないんよ。あたしは飢えてるんだよなあ~」
これをスルーして。
「まさか星落としなんだが?」
なんだよ、そっちか。
ああ。
呆れたけど。
うん、ここは教えておくか。
あたしらの足元に突き刺さった剣と、ロウヒがいあ、乙女神が半べそかいて尻を点いた珍しいのが見れたんで回答しよう!!
「あと2時間くらいで空に姿が見えると思います」
はぁって声がむなしく響く。
わりとハモってた気がするけど、どったの?
「ちなみに...」
「1個だよ、ミーティアでやらかしたんだから今回は1個(両手を広げて、何やら抑え込むようなジェスチャーで鎮める)。大気圏を通過するまでに燃え尽きと困るので」
あ? 大気圏とか聞き返されたが、あたしもここは華麗にスルーした。