モーさん、動く 4
「緊急避難って、魔王ちゃんに叫ばれたけど、何かあったの?!」
ミロムさんが戻ってきて。
その説明を強いられた。
で、
殴られ、揉まれ、ぎゅっと首を絞められた。
「なんで、ひと思いにぶつけなかったのよ!! 今の撤退命令で魔神が気が付くかもって。なんで思わなかったのかなあ、ごめん。こんな悲しいことは言わないと思ってたんだけど、千載一遇のチャンスだったかも」
最後の首絞めは甘い。
力が入ってない。
確かに現有戦力を失いたくないための処置が裏目に出る。
分かる。
ずっとソロだった訳じゃない。
「魔王ちゃん!!」
ミロムさんの泣きはらした目が。
焼け石に水だと分かってる支援砲撃の嘆願。
『喰らった勇者の失う前のスキルがアレの動力源であり、鎧でもある。勇者にはそれぞれ一つの自分たちに合ったユニークを与えてた。それがクリエイトってものなんだけど』
乙女神が砲撃に参加する魔法使いたちに説く。
言わせているのは魔王ちゃんだ。
◇
憑依しているっても、本体とのパスは繋がってるから。
幽体として身体から抜け出て、現界の他人さまに入ってるわけじゃない。
何かあったら、ちゃんとサルベージできるよう命綱がある。
これを魔王ちゃんが握って脅したのだ。
じゃ、あたしにも魔王ちゃんと。
「ないない。魂の分離は個人として成立して、もう結構な歳月が経ってる。私と、セルの間のパスは糸電話みたいなもんじゃ無く、こう、高次元的なテレパシーなのよ!!」
言ってることがチンプンカンプンだ。
本陣に帰還したのちのミロムさんは、どうも喪失してた時間分だけスキンシップが激しく感じ。
取り戻すように接してくる。
今も、腕から離れず、魔王ちゃんに唸ってるような。
「――確かに、属性魔法への抵抗が激しく強く感じます」
エルフだけでなく、他種族選抜の精鋭である魔法使いたちが悔しさを吐露する。
自分たちは人類最高の戦力だと自負してた。
金色の首輪が、きらりと光ってた。
冒険者ギルドのランク制は、強さと言うよりも世界への貢献度と見た方がいい。
ゴールドチョーカーが真に人類最強だとすると、ドラゴンを素手で殴り殺せるような化け物勢ぞろいになる。
これはいい事じゃない。
ギルドが独立した組織であることが創設した、乙女神にとって都合がいい。
『それが、勇者たちそれぞれが獲得した攻撃全般の無効化だ。とは言っても万事すべての攻撃が無効化されるわけじゃない。そんなチート、神の首を絞めるような効果も無いからね』
というと。
『彼らには伝えなかったけど。蓄積された攻撃の一定ダメージ値を超えた攻撃は通るように設計されてある。平手打ちも何度と喰らえば、頬が腫れて赤くなるように。ちくちく爪楊枝な攻撃も針孔でも通すほどの痛みに変わる...』
その数値が見えない。
希望はあるけど、絶望はぬぐえない解説。
『故の星落とし』
おお、なるほど。