モーさん、動く 2
――あたしは、ひきつってた。
「これ、マジで倒せるものなの?!」
いあ、まて。
確か数分前に乙女神はバフが足りないといった。
『ああ、セルコットは応援してるだけだしな。もとも、聖女のバフに関しては、踊り子のような神楽舞や、神降ろしの舞などがあるし。その他を挙げれば、教会の最奥に鎮座された巫女のように。何千、何万もの時間を賭して祈るものだが、これも、これもセルコットには出来ないことだ。ふふ、出来ないことが多いな、このポンコツ娘は』
トンコツ娘って、脂ぎって無いよぉ~、無いよー!!
『トンコツなんて言ってないわ!!』
顔を覆った、女神だが。
『バフが足りないのと同じように、デバフも積極的にかけていない。つまり、最低限のパーティ戦術が駆使されていないのだ!!』
ぱーてぃ?
魔王ちゃんも項垂れた。
其処か、って感じで仰ぎ見て、上体を仰け反らしてた。
あたしより魔王ちゃんのが大きいですと?!
「ばか、セル。そこぢゃないよ」
え?
なにが。
「終焉の魔女たちは元々、魔力タンクとして乙女神の片割れだった魔女に供給してたに違いないってこと。彼女たちがその役目から解放された後、魔力タンクは各々で使い方を模索していくことになった。ソロだよ、ソロの時間が長過ぎた!! 効率よく... いや、的確に適宜の支援魔法は垂れ流すだけじゃダメなんだ。前衛にのみ身体強化とか、疲労回復にヘルスの管理、仕事が多いからお任せはダメってそういう事かよ?! 乙女神さんよ」
ロウヒが困り顔だ。
やや斜に構えて――
踵を返しだす。
おおい。
ちょっと何処へ行きなさるんや、かみさま。
其処じゃなかった。
いや、そういう指摘ではなく。
あたしは応援歌を歌って、フレー、フレーって騒いでただけだった。
ロウヒの身体を拝借してた女神も、妹柱と同じように鼻ほじの『てきとーにヤレ』的ムーブをかましてて13人の魔女の力が必要なのに。ロウヒ、使ってなかった説が急浮上してたんだけど。
よくよく考えたら、魔王ちゃんのヒーラー・マネジメント管理不足説だった。
だから。
あっれー???
な、雰囲気になったんだ。
「おい、ちょっと待て。アホ女神」
言い方。
怖いよ、怖いよー魔王ちゃん。
「魔王はね、称号じゃないんだよ。魔族っていうわからず屋どもを(右こぶしを握り締め)、拳一つで黙らせる胆力と武力が必要なの。女神もこれで分からせないと、マジ、ダメなヤツなんかな??!」
かつて天界に多くの神さまがいた。
それは大小さまざまで、絢爛豪華な性格を持つ神々で。
実に俗っぽい人々だった。