乙女神曰く、さあ、狩りを始めましょう 4
いっしょくたに集められた英雄たちはもとい。
ミロムさんとエルダーク・エルフの小隊も、魔王ちゃんの放った強力な催眠魔法に当てられ、一心不乱に駆け出してた。こう、まるでゾンビが獲物でも追い立てるような、そんな。まさにそんなシーンで“わらわら”と走り出してたんだわ。
ああ、ちょーまってー!!
エルダーク・エルフたちの主人は、もともと魔王ちゃんだし。
彼らにチャームは効かない。
ただし催眠魔法とともに強力な命令が掛かってれば別だ。
次点でミロムさんを守ってくれるとは言え。
それはあくまでも次いでという順番でしかなく。
『ミロムは保護せよ!!』
よく通る魔法の声音で、魔王ちゃんが追加の上書き命令をエルフ達に与えた。
「ありがとう」
これは心からの感謝。
テレパシーか或いはソウルメイトのようなパスの繋がりか。
分割される前からの腐れ縁か。
「いあ、セルの友達は私の友達でもある。気にすることはない、配慮の足りない命令だったことに深くお詫びする」
そんな他人行儀な。
あたしと、魔王ちゃんの仲じゃんよ。
◇
高台から人々の賛歌を受けて。
乙女神に身体を乗っ取られたロウヒは、神格に注がれる信仰に震えた。
憑依されているロウヒも同じ体験をしている筈だから。
この麻薬のような興奮の渦の中だろう。
「で、」
終焉の魔女たちの役目とは何か。
はっきりとした記憶や知識はない。
世界を灼いた時は、魔女はひと柱の妹神であったし。
それまでの世界において。
戦神や戦乙女とも崇拝されてた、対象者でもあった。
故に――
終焉の魔女という、個人では扱いきれなかった自然への干渉とか親和性に目を付けた、ひと柱と契約して他の男神たちを一掃したものと考えられる。その後、乙女神はすべての神々の功績を独占して――。
『なーんだ、其処まで知ってるの?!』
ふてぶてしい表情だ。
こういう顔は知ってる、ドヤってるんだ。
『妹神はさ、お姉ちゃん子だったからね。この世界に神はいくつも要らないんだよって、囁いたら、あの害虫どもを一掃してくれたんだよね』
女帝からも『最低』って言葉が漏れた。
ああ、悪ぶってる感じがするけど、最低だ。
「魔神として降臨させたアレはどうやって倒す?!」
そう、そこ。
魔女たちの力を再び、あたしに結集する?
『自殺して契約は継続中だろうけど、パスが繋がってない。集めるというより、集めた英雄たちにバフで貸し与えるのが役目になると思うよ。まあ、』
「まあ?」
ハモる女性。
そこにあたしも含められてる。
駆け出して、チャームも切れたミロムさんも。
振り向きざまに。
エルフの小隊長さんとともにハモってた。
『ま、今までため込んでた魔力は生命力でもあるし。寿命が縮むか、或いは老けるかもしれないって』
いやああああって声が上がる。
そりゃね。