乙女神曰く、さあ、狩りを始めましょう 2
「ハイランドの王よ、女帝よ!! 我らに指示を!!!」
光の柱が立った後。
神々に招聘されたと感じた英雄たちは、その場の雰囲気に『自分なり』の答えを導き出した。
魔神大戦の趨勢は、ハイランド王国の女帝が握っているのだと。
うらを返すと。
女帝リヒャルディスにとって、生涯最大のピンチである。
典型的な温和なエルフ民族の塊みたいな人。
それこそ、本来の女帝の姿なのだ。
「え?! えー、」
嫌だーって口から出そうになった。
ああ、分かる。
しなびれた茄子みたいだった、あたしも。
こんなシーンで振られたら逃げる。
そりゃあ全力で。
「あー、もう」
魔王ちゃんが口元にハンカチーフを当て。
何度か咳払いをしたのちに。
『貴様らに防御魔法をかけるから、勝手に特攻しろ!!』
言い方。
◇
魔王ちゃんは声音を女帝に寄せた言葉で。
冒険者たちを鼓舞して回り、男の子のMっ気を叩き起こしていく。
目覚めた子たちは...
「これ使い物になるの?!」
「大丈夫、魔女たちがある」
こっそり逃げようとしてたのを捕まえて。
あたしと両者に気まずい空気が流れてた。
「あたしらをどうしよってんだい!!」
代表者は一番の年長者で、魔女と言うよりもアマゾネスのような方。
こう、筋骨隆々でちょっと鬼人っぽい。
「えっと...みなさん、終焉の魔女で間違いないですか?」
あたしの記憶をたどればいいんだが。
申し訳ないけど転生する以前の記憶は、ほぼない。
『転生する気もなくての自殺に近かったからねえ~』
ほえ、あ?!
変な声が出ちまった。
乙女神はロウヒの声と、身体を借りて降臨し。
再びあたしらに遭遇してる。
まあ、埒が明かないってのもあったんだろうし。
見てるだけってのも性に合わないのかもしれない。
「あたし?!」
『そ、実の妹神だった、あんたが。血の繋がりもあって、ほぼ一緒に天界へ上がったのに。お姉ちゃんを見捨てて死のうとしたんだから、そりゃお姉ちゃんが手を差し伸べるってもんでしょうが!!!』
まな板だと、ヤジってた人が。
「昔のことだから、セルは気にしない。今は、セル・オルタ、私のだから恩着せがましくちょっかい出すな!! この偽善者が」
魔王ちゃんが怒ってる。
こう、非常に激しい炎の感情がドス黒く渦巻いてるような。
『まだ、根に持つかあ』
「ああ、持つね。魔女探しに行かせた兆しも、あの攻撃からセルをあの地から遠ざけるためだろ!」
はて。
何に怒ってるんだろう。
ロウヒは肩を竦めて、小首も傾げた。
『予測は出来なかった。勇者の権能か、土地神としての結びつきか、或いはそのすべてか』
号令とともに第三都市だった地に向かう冒険者たち。
乙女神の権能で、いや都合上だろう。
神は世界のあっちこっちで私利私欲の戦争に辟易してた。
ついでなので...
戦争してた連中のすべてを、
一切合切を魔神の足元に召喚したところだ。
“紫水晶”の宗主が、中央大陸で画策してた大帝国建設のための侵略戦争も。
すべて、ここへ。