乙女神曰く、さあ、狩りを始めましょう 1
魔女ロウヒが指さす先に。
身を屈める不審者の女性たち――じっくりと観察すれば、鍔の大きなとんがり帽子に、よれたローブを着る典型的な魔女感が漂って。いかにもと言わんばかりの~ のぉぉぉぉ~???? お?!
おやおや、みなさんどうもお年頃?
待てよ、待ってよ、世界の時間。
こんな時は、さ。
『どったの?』
と乙女神があたしの心の声を、叫びに反応してくれてもいいんじゃないかな。
ねえ、いいんじゃないかな?!!
そっか。
聞こえないふりか。
いいさ。
世界時間が、うん、まあ。
効かなかったとして。
逃げ腰、及び腰の魔女たちは、人種的にもエルフがちと成分的に少ない気がする。
『どこ、どこどこ、どこが少ない?』
「えっとね。先ずは~ ギルドから派遣されてる賢者の背後」
指さした先に例の三角帽の先が見える。
激しく上下してるとこ見ると。
『ああ、あれ!! 屈伸運動かな?』
「いあ、どうだろう。あたしの権能、セルちゃんズ・アイによって... うーん外見年齢はじゅぅぅ、じゅぅ、ご、いあ、ななか。17歳っぽい雰囲気かな言ってて20歳未満だと思うんだけど」
『そんな権能が!!』
魔王ちゃんをセルコット(本物)と再認識した時からか。
かつて自分も神のひと柱だった時の記憶めいたものが締め忘れた蛇口のように。
ちょろっと漏れてきて。
それで獲得した神通力のような力。
真実なんて大層なものじゃなく、ちょっと先が見える“千里眼”めいた権能だと思う。
今のところ4里先しか見えないんだけどね。
『で、次はどの娘が見えるかな?』
「そうだね、巨漢のゴールドチョーカーさんの隣に。ふてぶてしく胸張ってる子かな。あれも、魔女でしょ...諦めてか、或いは誤魔化しの為に帽子なんて、あれ。いつの間にか投げ飛ばしてるし、開き直っても居るよね!!」
あと3人も、似た雰囲気で。
冒険者ギルドの関係者のフリをしている。
あたしの目からは逃れられんのよ。
『ほおう~』
「あの4人は三十路手前かな。なんか、こうエロい雰囲気がある。男の子なんて簡単に手玉に取る感じがするし、ちょっと苦手だなあ」
この感覚は生前。
転生する前にも感じた気がする。
『魔女の世界に美魔女は不思議ではないのではないか?』
いやいや。
せいぜい400年とか500年くらいでしょ。
長命種としての老いと、その他の老いは違うし。
エルフだって時間はくるのだ。
あたしは。
ひと柱だったのを自分自身で放棄した。
けど、やっぱり世界は。
「魔法を使うのが女ってだけで、魔女と言うのなら。――でも、終焉の魔女は“世界を灼いた魔女”の従者として世界に刻まれた存在。ま、一部が神化してたとしても、そいつが特異点にはならんでしょ?」
い、ま、まさか。
『うんならないね。つまり、ひと柱との契約により、不老不死か... それに準じる使い魔にでも、なったんかな』
たぶんと、続いてた。
そういう事なら。
って、待て、あたし。
今まで誰と話してたんだ、おい!!!