さあ、終焉の魔女たちを探そう
そうは言っても。
魔王ちゃんの足元にあたしをみつけて、魔女ロウヒが抱え上げる。
おっと、何か獣くさい子が。
「これ?!」
鳥、ぼんじり... せせりの香り。
「ああ、それはね。世界を灼いた魔女の抜け殻。ばっちぃからロウヒちゃんの小さな手が」
魔女と言うには幼く見える、幼女...ロウヒ。
おっと、その子は終焉の魔女じゃなか。
いあ、いあいあいあ...。
ちょ、ひどくない。
「...み、みず..、水をください」
心の中で思ったことは、憤ってみせたかったし。
そういう怒りに満ちた言葉をつづりたかった。
でも、でもね。
こんな状況では、、、、
「み、みず。水をください」
しおれた茄子の最後のことば、さね。
◇
あたしは一命をとりとめた。
もしもこの身体で死んだら、どうなるのだろう。
「仮にそうなったら、居候が居なくなっただけじゃないかな? 身体の生命機能を速攻で回復させなくちゃならないけども。霊体として魔王道を歩む予定だったセルコット、私が、ついに受肉したー!!って宣言できるかもだよ、さあ、早く身体を明け渡せ」
出ていけ居候って言われた気がするよ。
「そんなあ~」
とりま。
抵抗だけはする。
「そんな漫才を見に来たわけじゃないぞ?!」
女帝は待たされてた。
紹介されるタイミングを、だ。
もちろん、ポンコツになったとは言え、エルフの御伽噺に出てくる最強の魔女。
世界を嫉妬と狂気で灼いた女。
魔女に紹介されるのを。
「女帝です」
え?
は?
「ちょ、ど、どこ、え、えー???」
混乱するふたり。
ああ、女帝リヒャルディスさんが可哀そう。
「雑、雑だぞ、魔王よ」
魔王ムーブだから、セル・オルタの姿勢はそれでOKなんだけども。
「リヒャルディスって欲しがり屋なのかい?」
この場に“煙水晶”の賢者が居なくてよかった。
こんな姿、見せられないよ。
権力者を弄って楽しむオルタの姿とか。
他人に見せちゃダメなヤツだ。
「ほ、欲しがり屋、で、では、ではないのだが」
モジる。
こうくねくね。
幼女ロウヒも、大叔母と同じようにクネってた。
「――ねえ、セル? あのダメ神、何やらかしたの??」
素に戻った魔王ちゃんが問うてきた。
萎れた茄子になり果てた、あたしを見て確信はしているけど。
「あたしを終着端末に使いやがった」
分かってるさ。
何をされたかなんて。
ポータルを開くには、開く場所とつなぐ場所が必要だってこと。
失われた言語の強制召喚でなければ、通常の召喚には拒否権がある。
もちろん、力量差が問われるわけだけども。
神に戻ろうとしている者と、世界の管理者である者との違いは歴然。
邪神の崇拝者たちの目の前から忽然と消えたことも踏まえ。
「で、魔王ちゃん... 終焉の~はまだ、必要???」
光の向こう側に集められた強力な戦力。
ロウヒの口を借りて――
『大丈夫、大丈夫! そこらへんに隠れてた魔女の協力者たち... いあ、同窓生たちは見つけ出して集めておいたから。あとは好き放題やっちゃって!!!』
乙女神のヤツめ~