厄災の魔獣と、13英雄たち 10
乙女神は言った――セルコット・シェシーの身体を食い破るような演出で『魔神』が現れるようにする。
そん時はタイミングというか。
あるいは何かの兆しがあると思ってたんだけど――
失念してたというか、あのダメ神を信用しちゃイケなかったんだよ。
あたしは、滞在期間を延ばして。
第三都市“ベレズニク”の冒険者ギルドに立ち寄ってた。
銀等級の首輪のせいで、アルハンゲリスクのギルドに呼び出されることはなかったんだが。
そうだね、急にあたしの背中が光ったと。
周囲の職員さんたちが言うので、
手鏡を貸してもらって、何とかして自分の背中を見ることができた。
「お、おほ。チャックの半開きみたいだ」
なんて馬鹿な話をしてる場合じゃない。
あたしは、さ。
あたしがいる場所が、いわゆるマップに刺す画鋲のようなものだって事だった。
魔神はそこに送られる。
そうさ。
乙女神の宅配は、それで終了だ。
◇
さあ、宴のはじまりだあって雰囲気。
でもない、でもない。
連邦の第三都市、人口は約40万人を数え。
文化と交易の要として栄えた交易路の中心点、城塞都市とも吟遊われた都。
王都“アルハンゲリスク”が第一都市して築かれる以前であれば、だ。
この都は連邦百年の歴史の中で四半世紀の間、中心地だった。
その“ベレズニク”に魔神が降臨する。
――生き残りが居たらこう考えるだろう、あたしが。
冒険者セルコット・シェシーが召喚した『魔神』が街を恐怖に飲み込ませたのだと。
そして恨まれ、呪われるんだ。
あれが、テロリストですよって。
もう、女神のバカぁー!!!
天界アラートが地上に降り注がれる。
光り輝く御使い達が飛来すると、ああ、なんと神々しい。
分厚いどんよりとした雲が割れて、光の腕が地上に伸びてくる――神の奇跡だと演出された眩い繭の中から、ハイランド王国女帝“リヒャルディス”と、戦鹿の騎兵、魔王ちゃんに...抜け殻にされた気分のあたし、行方不明だったミロムさんら御一行だったんだが。
こりゃあ、集められたっぽい。
「き、奇跡だ!!」
ギルドの賢者が呟きから、大きく聞こえるよう態と叫んでた。
乙女神のヤツは、あたしらを詰め合わせの菓子のようにアルハンゲリスクに運んだだけで。
後のことはよろしく~と、投げたに過ぎない。
「え。あー、これどういう事?」
魔王ちゃんと親しげに会話する女帝。
耳元のひそひそ... で、ある。
しなびれた茄子こと、あたしの扱いはもっとひどい。
転移先の指定の為に、だ。
あたしのオドが目標座標に指定され、魔法陣がごとき役割を担わされた。
当然、顕現させた後はスッカスカのMPゼロになり。
精神に異常をきたすレベルにもなる。
ただいま、錯乱状態である。
「天界のアラートは聞き取れたと思うが、とうとう恐怖の大王が地上に降り立った!!」
ギルドの賢人が畳かける。
亜人代表格みたいなハイランド王国も、たとえ女帝が状況の把握に手古摺っていようとも。
彼らもこの存亡戦線に参加するんだと印象付けて、
ギルドの賢人は更に...
「人類の力をすべて投入して、魔神を打ち滅ぼさん!!!!」
と、宣言してた。