厄災の魔獣と、13英雄たち 9
英雄候補のゴールドチョーカーたち。
世界各地からとてつもない方法で、魔法使いの使い潰しを行って集結させられた。
術者だけならば記録保持させた“タリスマン”で放浪したことのある地を目指してひとっ飛びぃ~なんて芸当も可能なんだけど。それでも、犠牲にする魔法石や触媒、自身の魔力の限界まで絞り出さなければならない。
魔法による空間移動法ってのは『じゃ、いっちょ行くかー!』ってノリでは出来ないってこと。
ま、うちの魔王ちゃんは出来るのも不思議な子なのだ。
さて。
世界中から力ある者、才ある者、なにもかもすべてにおいて優秀な者が集められて――
約千人。
たったこれっぽちと言うなかれ。
これでも無名の英雄みたいなのは選抜されている。
すべては乙女神のツバのついた、世界屈指の有名冒険者たちである。
――ゴールドまで上り詰めて、
いずれかの協会・教会に認められると、プラチナになる。
そこまで上り詰めても、冒険者の上位ってわけじゃなく、所謂、箔でしかないが。
腕っぷしはゴールドだってこと。
ゴールドこそ人類の頂点なのだ。
(それらを踏まえて――
プラチナ・チョーカーは世界に数人、いや数十人か。
ゴールドほどの実力ある冒険者が多大な功績を打ち立てた者のみに与えられる勲章とか。
そういう意味で。
そんな実力者には二つ名が用意される。
自称してもいいけど。
あ、あたしのは...え、えっと。
じ、自称じゃないよ。
呼ばれたんだ、仲間内というか、盗賊とか... あ、悪人たちから。
火炎球ばかりぶっぱするから、さ。
“火炎球の魔女”って。
◇
王都アルハンゲリスク、王の館。
王なんていう為政者はいないけど、部族長の合議制ではなく『スケープゴート』としての王はつくっておくべきだったと、彼らの脳裏にはいつもそれが過っている。
「いや、こうして未曾有な状況だから責任逃れに考えるのであって、平時においては飾りの王だって派閥を作って牙をむく。いずれにせよ、現実のこのような時でも誰かの足を引っ張りあう円卓であるならば... これはこれで機能するってことだ」
太い腕を組み、長く剛毛な口ひげをたくわえたドワーフが、つぶやいた。
まるで独り言を装ったように。
牽制だ。
こんな事態の抜け駆けは、事態を収束させる方ではなく。
いち抜けに近い。
乙女神の言葉を代弁する巫女も招かれ――『これは人類存亡に関わる重大な局面なのです』と告げたことによるもの。
獣人や亜人あたりから、
「俺たちは人類じゃないよな?」
ってささやかれる。
ギルドは首を振って、否定した。
「妖精も、も、か、関係...」
「無いわけないでしょ。狂気の魔女は――そうですね、世界に楔として放たれた仮の姿。こことは別の世界から邪悪で凶悪な恐怖という塊から現出した、悪しき大王そのもなのです!! ですから例えば、目についたエルフであろうと、あるいは地を這うドワーフ、ノーム、ゴブリンであろうとも関係なく。すべてを焼き払うでしょうなあ」
うっわ、おっかね。