厄災の魔獣と、13英雄たち 8
島大陸では、深刻な状況になってた。
いあ、世界はひとつの円のようなもので。
例え陸続きでなくとも、どこかのタイミングで様々なことが起きている。
理不尽なこと、などなど。
あたしたちは。
物凄く楽観視してたのかもしれない。
例えば。
あたしたちが物語の中心で。
舞台裏では物事が止まってるもんだと思ってた。
いあ、違うな。
あたしたちが関与しなければ、それがクローズアップされないとか思ってた。
でも違った。
救助された魔王ちゃんは彼女らしくもなく。
急にぶわっと涙を流して咽び泣いた。
唐突なことで、皆、唖然とした。
◇
如何した?と、女帝陛下から問われ。
彼女に事の顛末を包み隠さず話す決意をした――終焉の魔女がなぜ、必要なのか。まさに彼女の姪っ子、ロウヒにまつわる話だし。狂気の魔女プロジェクトは、そもそもの発案者たちだからだ。
「なるほど、それは無計画にもほどがあるな!!」
女帝は憤りを顕わにして見せたが。
控える賢者は肩を落とす。
同じ卓上の末席にあるんだけど、卓にそのままのめり込みそうな。
そんな形状で溶けそうだ。
「どうした、賢者よ?」
「そうです、賢者殿は如何?! もしや!!」
気づかれましたか、と。
声でも掛けようとした。
「お腹が痛いのか!!」
「ちがいますっ」
怒気に殺気すら乗せて返答。
「違いますよ、お嬢さん方」
若い女の子に見られて――
女帝、魔王、魔女の三名が頬を朱に染めた。
字面に、絵面、それぞれのパワーからして怖い女の子だと、あたしは思うんだ。
この場合、人畜無害な。
あたしの方が可愛げと、可憐さにちょっとのドジっ子要素もあって、女の子らしくないですか。
あ、はー。
「よ、よせ。冗談は... 兵士が見ておる」
「見てませんが、冗談です」
――賢者は、殺されそうになった。
「っ、一言、何かヤる前に相談くらい... して欲しかった(痛っ」
外見がジジイの不老不死を得た身だけど。
冥土が一瞬でも見えたのは、この失言の時のみだ。
肉体が消し炭にされたら復活のしようが無いし。
魂ごと焼かれるんじゃないかって恐怖も感じた。
「現在進行形で、ノル・ファールン王国は侵略戦争を遂行中です。北方の越境には失敗したとはいえ、目と鼻の先の西の海岸線には、上陸してしまった後でもあります。まあ、誰が差し向けたのかグリーン・キリングヤシガニの群れが突如出現し、大いに暴れてくれています...が」
そんな野生動物の物量も。
長くは持たないと賢者は付け加えた。
確かに。
一寸の動揺は発生させた。
とはいっても、凶暴なグリーンに、レッド、クリムゾン・ビッグクラブなんて魔獣も呼び出されてるけども、討伐後の食糧事情が解消されてしまう厄介さがある。
レッドの方は、まあ。
普通に調理すると死者がでる魔物なので、暫くは食当たりも含めて時間稼ぎにはなるだろう。
「浜辺にカニは不自然なのか?!」
と、魔王ちゃんがしゅんと萎れた。
うん。
やっぱりキミか。