表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
47/539

武王祭 騒動 3

「同じ師匠についた身。感覚を研ぎ澄ませろと教わったんだ! 指先でも、おまえのは柔らかくて、そして“好きだ”ぞ! まな板なんて誰が言うんだ、そ、そそそそ...そんなことは無い! 断じてない!」

 こうしたやり取りは、同性同士でも宿屋の自室でやるべきだと分かる。

 だってさ。

 これ、ただの見せもんじゃん。

 しかも晒しプレイ付きの...絶対に頭おかしいって思われるじゃんよ。


 で――。

 店の奥から、通りの向こうから、ついで隣り合っている、向かい合っている席から...

「よ、ご両人さん! 熱いねえ」


「言いもん見せてもらったよ!」


「純真っていいねえ」

 てな具合に応援貰っちゃうんだもん。

 これが恥ずかしくないやつは、とにかくアタシらの代わりに、モテ囃されてくれって感じで。

 すっごい真っ赤にさせられた。

 連れの女剣士なんて耐性が無いから、コチコチに固まったまま...

 あたしの顔をぐじゃぐじゃに歪んだ泣き顔を見せてくる。


 あららら...


 すっごい鼻水垂れてる。

「花粉症?」


「ちがうよ、でも...心配ありがとう」

 あ、ああ。

 そこは素直なんだ。

「で、出ようか?」

 王都の大通りに面した洒落たカフェで、

 ま、同性同士で乳繰り合ったわけだけども...

 剣士の彼女も武術大会には出るようで、

「このままだと面が、割れて」

 と言ったところで...

 彼女もようやく状況を察してくれた。

 いや、あんな大騒ぎしといてなんだけども、さ。

 ちょっと通りの角へ曲がったら、さ。

 手をつないだわけよ。


 指と指の間に絡める――恋人つなぎ――ちょっと、新鮮。

 で、口を吸う。

「バカ、がっつくな...」

 あたしに向けた、剣士の声とそむけた眼差し。

 いやあ、かわいいわ、この子。



 賭博場に足を運んでるのは、ガムストン・レイさん。

 意味が不明だけど、天パって呼ばれてる。

 協会の12高弟最古参であり、ニンジン嫌いのゾディアック・マーシャルアーティストっていう肩書を...なんとなくひけらかす、我らがリーダーさまである。

 給料が入ったからという、理由でただいま内縁のご婦人に内緒で賭博場に足を運んでた。

 これがバレると、いささか厄介なことになるのに。

 ギャンブラーというのはま、一種の病気のようなもので。


 “そこに山があったら、登らなければならない”って思うのと一緒だと、屁理屈を言うのが...人種で多いそうだ。

 あたしの知り合いにも居たよ。

 勝ってる時の気前の良さは、ドがつくほどのお人好しで、さ。

 負けた時は守銭奴。


 いや、あたしはただの借金癖で。

 ギャンブラーじゃあない!!!

 なんかとんでもないトコからブーメラン飛んできた気がする。

 ま、あれよ。

 ガムストンさんは、ここのところツキに見放されてた。

 だから、内縁のご婦人さんとも不仲っぽい。


 今日くらいは、まっすぐ帰るべきだったと思うよ。


 ポール君が覆面して、草試合に出てたのを見て...賭けちゃってた、わけよ。

 ボロ勝ち。

 オッズ28倍で給料が全部、金貨に変わってた。

 傍から見れば、まるで錬金術みたいな変容だった――胴元に呼ばれるまでは。

「なあ、兄さんよ? ありゃ、お前の知り合いか何かか?」

 覆面してても、同じパーティならば見分け位は付く。

 ただ、ガムストンさんは『でかしたぞ、ポール君!!!』って叫んじゃってたんで...呼び出されたわけだ。

「い、いえ...ちっとも」

 今更遅い感はあった。

 が、胴元はやや寛大だった。

「獲得賞金の半分、置いてけや!」

 みなまでは言わない。

 半分で見逃してやる、その代わり...お前の金蔓、な。一枚、俺たちにも噛ませろよ!っていう流れの話がだ、刹那の中で行われた。

 これでイヤですと言えば、

 賭博会場への出入りは禁止され、

 獲得した賞金額はすべて没収された挙句、掛け金だって返ってこない。

 やや沈黙が流れて――

「どうすんの?」


「は、はい...」

 天パ、撃沈ス!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ