厄災の魔獣と、13英雄たち 6
天界に呼びつけられたのは、あたしだけじゃなかった。
魔王ちゃんも。
風呂場でのびーしてるトコで召喚。
首を傾げながら、乙女神と対面のお風呂タイム。
「何してくれてるのかな?」
『何とは?』
このダメ神が。
魔王ちゃんの感想で、決してあたしのじゃない。
これで天罰食らったらたまったものじゃないし。
「風呂、しかも女神と裸の付き合いとか、最悪じゃない?」
嫌悪がすごい。
世界を灼いたのは、あたしであって。
魔王ちゃんこと本物のセルコットではないんだけど。
この子は物怖じしないというか。
『神様エキスがお湯に染み出してると思えば?』
あからさまに険悪な表情に変わる。
「乙女神自身で昆布か鰹節になった気分なの?! マジで、そんな出汁の出た湯に浸かりたくはないわ!!」
セルコットの中に不純物が混じることへの嫌悪。
ひいては...
身体担当のあたしに悪影響が出る。
あー。
どうだろう?
◇
「で、何の用?」
湯船から退散した魔王ちゃんは、べつの水風呂へ。
天使たちが霊泉とかいう湧水を汲んで、貯めたものだというので入ってみた。
神のしつこい汚れが洗い流されていく気分に。
『それ失礼じゃない?』
神の汚れ?
『そそ』
「やかましい! 要件を言え、要件を」
せっかち、でもない。
意識だけが天界にあるのだから。
仮の肉体は今も湯船につかってるわけで――逆上せる。
最悪、受肉してた元も死ぬ。
肉体提供の敬虔なるエルフだが。
「最悪霊体でも、いっか」
『そえは良くないよ!! 良くない』
乙女神は提案してきた。
荒唐無稽だと突き放すつもりで最後まで耳を傾けてたけど。
よくよく考えてから、小さく頷いてしまってた。
いあ、納得しやったのだ。
神の提案は、
信者たちに与えない奇跡を――
貯めこんでた神通力の一部を使って。
“邪神”を転移させて、狂気の魔女として打ち倒そうという案である。
すでにその布石はギルドを介して打ち込み済みで。
「天才かよ?!」
見直したわけではなく、とびきりに驚いてた。
乙女神のもう、ひと柱である妹神のほうをだ。
『え?』
「なにすっ惚けてるんだよ。竜を御してる妹神の存在はセルの中で知っている... 天界に戻らず方々、ずっと旅行しながら人界にあって、人々の幸福を願ってるとかって出来た子なんだろ?」
魔王ちゃんの中では評価高いけど。
あたし的にはそこまでじゃなく。
ぶっちゃけ、三姉妹の中では...
家出したまま帰ってこない、放蕩娘のような。