厄災の魔獣と、13英雄たち 5
冒険者ギルドでは世界のありとあらゆる手段を用いて。
最新の情報共有と戦力調査が飛び交っている。
ギルドから冒険者に送られるのは、色分けされた首輪だけでなく。
神代よりもはるかに高度な文明の何れかを利用してつくられたプレートがあって。
このプレートの更新はマメであってほしいとのこと。
残念ながら。
あたしはこのプレートの更新を10年ほど怠ってたようだ。
ミロムさんたちとのパーティを解散させた後から。
10年間、更新していなかった。
ま、故に鉄等級だったわけだ。
チョーカーがね。
今は実力に見合った銀等級を暫定として身に付けている。
◇
治癒士のお姉さんの手つき、指先、わしゃわしゃ動いてて。
「エルフさんって、やっぱり子供っぽいの?」
大きなお世話です。
ま、ふくよかな。
いあ、なんか肥えた人は見たことがない。
郷でもスレンダーな人が多かったように見えたけど。
あたしたちだって。
不摂生すれば...
たぶん、お腹が出てくると思う。
「どうでしょう?」
そうでしょ。
返す言葉の真意がつかめず。
「この辺りには――」
リーダーが衝立越しに、今を伝えてくれた。
「ギルド指定の“SS”ランク討伐対象が目撃されている」
ギルドは大きな組織。
そのギルドが特別発注するクエストには等級が付けられる。
上は天井の“SS”。
次点で高難易度の“S”。
複数のベテラン、黄金等級を含む“A”。
白銀等級のみで構成されたパーティが2隊以上の“B”。
銅黄等級と鉄灰等級が混在する“C”。
DとEは、一般クエストと同じ列に並ぶので基本、存在しない。
たぶん、存在しない。
「ごくり」
言葉のように音が鳴る飲み方をしたトコ。
唾が飲みにくいほどの恐怖を感じた。
ギルドが“SS”指定したですって?!
「白銀等級の首輪か」
実力が伴っているのかと疑いの眼差しが向けられた。
そういうちくりと来る視線は、さ。
なんとなくでも分かるんだ。
「実績は?」
「田舎の業績で済みませんが」
なんて前置きをしたけど。
リーダーさんからは「何処だって構わないさ、人口が多いから苦労が違うってことはない。必要とされていることは何処にあっても同じ事、ただ淡々と人助けが常の冒険者家業なのだから」と説いてくれる。
ああ、このひと。
人間のくせに、エルフより高潔かもしれない。
「野良の賢人が遺した遺構の排除と、そこに不法投棄されてたデミ・ミノタウロスの討伐を」
あたしひとりだけの功績じゃないけど。
ここで魔法詠唱者協会の名を出していいものか迷った。
彼らってギルドとどういう関係だったかなあ。