厄災の魔獣と、13英雄たち 4
就寝中のあたしを叩き起こしたのが、乙女神以外でなら――
なんの御用か知らないけども、例のギルド派遣というベテラン・パーティさまの再登場。
宿屋の主人に口利きさせて。
ぞろりと、部屋まで勝手に入室したまでがいち動作ってトコかな。
「お客さま、ひとつ急な御用向きだそうです」
御用向きと来たか。
いわゆる検分っていう見回りの一つ。
とくに昼間の痴情以外に怪しかったとみえて、ここに来たのかと。
あたしの寝間着姿に一瞥くれるなり、
「今回はちゃんと服が用意できているな?!」
そんな言葉が掛けられた。
サウナの時は、治安維持で出動し。
痴女エルフの対応に無駄な戦力が投入された。
そんな折にちょっと知ったのだろう。
「君は、魔法使いか?」
唐突な物言いに確信があって問われている。
質問を濁せば裏があるだろうし。
素直に答えても、妙な感じだ。
パーティの他の連中。
あたしに質問しているのは隊のリーダーで、小剣の二刀流使いのよう。
身のこなしは軽業師のような足運びをしていて隙が無く。
やや影が薄い感じもする。
これ、ちょっと目を離したら見失うタイプだ。
「こんなとこに可愛い杖があるぜ?」
荷物改めは御用取り締まりの一環で、モラルハラスメントとして訴えることはできない。
他人様の杖が短かろうがどうでもいいじゃないか。
「なにを考える必要がある?」
押し黙って、周りをうろつく冒険者ばかりを見てたんだけど。
リーダーさんに問われてたのを失念してた。
ああ、そうそう。
返事するの忘れてた。
◇
あたしの装備品は10年やそこらで痛むような安物でもないが、高価なものでもない。
自分で狩った魔獣の外皮を利用して何年も、何年も。
通い慣れた防具工房にて修繕とかしてもら年季の入った防具。
この胸当てなんて。
買った当初はダンジョンヤモリの飛礫で何度も穴を開けられてねえ。
マジで、おっぱいが陥没するかと思った。
それと、この小手。
高く買わされた割に、すぐに留め具がイカレたりして酷かった。
火炎球の熱気に晒され続けて、まあ。
防具にも耐性スキルが付くんだって分かったときは、楽しかったなあ。
「さて、魔法使いのキミの実力についてだが?」
難しい顔をされてますね。
どうしたんでしょう。
「本当に登録しているのか」
なんと!
ここに来た理由――詰め所に叩き込まれそうになった、あたしは溜まらず、島大陸で冒険者をやっているのだと告げた。数日は宿泊するのだと思って、この宿には前払いで気前よく支払った手前。牢屋でひと晩なんて迎えたくなかったんだが。
そのことで少し、混乱めいたものが走ったようだ。
魔王ちゃんが長距離飛翔なんて空間転移させるから。
渡航記録のない不審な冒険者に見えたのだろう。
目下、治癒士のお姉さんに、ボディチェックを受けてるとこ。