厄災の魔獣と、13英雄たち 3
冒険者ギルドは乙女神の意向を忠実に実行するための機関で。
正教が行ってる託宣の儀は、ぶっちゃけると“盗聴”である。
多くの巫女たちはフィーリングという周波数の調節によって、女神の声を傍受しているのだという。
この戦いが1000年以上も続いてる。
最初の預言者こそは、女神もギルドに至る前なので。
方々にチャンネルを開けてたっていうけど。
一方的に閉じたら、こういう事に。
「そりゃそうでしょ?」
『なんでよー』
分かんねえのかよ。
神さまの声を賜るというのは特別なことだ。
隣人の声に耳を傾けるのとはわけが違う。
また。
神代の御世。
神さまが地上でも闊歩してた時だって、神さまとその他って分けられ隔てられて種族にしてみれば、だ。やっぱり彼らの声を聴くことが出来る者は特別だったに違いない。
『お、なんか... セルちゃんのわりに雄弁だなあ』
あたしだって分かるよ、その気持ちは。
まあ、恋焦がれるという感覚に似てるだけで。
まったく手が届かない相手だから、もう少し違った感慨なんだとは思うけど。
『なるほどね。あ、でも、一方的に閉じざる得なくなったのは向こうにも責任があるんだよ?!』
またまた。
いや。
あった。
乙女神は、人々に善行を積むよう促して――多くの知識を託した。
世界にただひとりの主神となった後は手探りの世界運営なので、ちょっと甘やかしすぎたのだという。
すると、種族すべてが生意気になったのだという。
ま、まあ。
なんかわかる。
『で、世界が今一つ纏まるために』
うん。
『セルちゃんに、さあ。いっぺん死んでもらいたいなあ、と思うんだけどさ、いっかな?』
は?
乙女神の満面な笑み。
眩しくて、眩しくて。
光、後光が煩い。
『後光が煩いって、はじめて言われた!!!?』
ちょいちょい、他人の頭から会話を抜き取るな。
ま、考えるだけで会話が成立しているのは有り難いが。
「なんで、死ぬ?」
そう。
なんで殺されなきゃならない。
『何でって、今、こうしているうちにも世界を灼いた魔女の再来として。世界のすべてから最大戦力がここに集結しようしているっていうか、仕向けたから!』
言ってやった的なドヤ顔の腹立つこと。
食事しながら口の葉を紡ぐと、くちゃくちゃ嫌な音がでるし、口の中のものが飛んでくる。
これは真似しないようによう。
反面教師ってヤツだ。
「仕向けられた理由は聞くのが怖いので。率直に問うよ、その行動は... あたしたちが抱えてる“島大陸”の問題に対処してくれるってこと?」
終焉の魔女が必要になった時点で世界の問題とも言い換えられる。
魔神の復活が近いのだし、その片鱗は各地の異常さに起因する。
乙女神は手元のナプキンで脇を拭って、匂いを嗅いで――小さく頷いてた。