厄災の魔獣と、13英雄たち 2
連邦の王都“アルハンゲリスク”に設置された、冒険者ギルド。
世界が魔女に灼かれた後に、魔女や魔獣に怯えて暮らす者たちの寄る辺にと。
預言者や託宣者などの賢人によって生み出された、情報共有システムが――冒険者ギルドである。
冒険者と呼ばれる協会員たちによって。
時に地域の不安を解消したり。
時に情報収集したり。
時に魔獣や魔物の討伐を請け負ったりと、様々に活動している。
システムとして機能し始めてからは、地道なロビー活動によって不動の信頼を得たのだけど。
国によっては便利なサービスくらいにしか考えていないトコロもある。
今だに、だ。
アルハンゲリスクのギルドだって。
ちょっと物知りな職業斡旋組合くらいに思われてたが。
世界評議会だと、自らをそう説明した賢人まで下界に降りてきたら、連邦の首脳陣も無下にできない。
なんだろうねえ。
神様でも見てるような、間抜けなツラァしてたと思うよ。
◇
ギルドの概念は“乙女神”によってもたらされた。
彼女の方も、体よく使える組織が欲しかったのが本音で、側近中の側近天使たちが下界に降りて――
組織の賢人、世界評議会の老いることない人間ってのはそういう始まりがある。
「我が名は...」
言いかけて、賢者が思いとどまった。
ここで告げても記録が残るわけでもないし、とか。
記憶にも残らないなと、判断した。
「評議会の者である。こうした厄災には当、ギルドが請け負うことになっておるのだが、まさか1200年も経過しているというのに未だ、浸透していないのか!!?」
唐突に表れて、勝手に失望している。
最初こそは天上人くらいに神々しく、恭しく奉じてた首脳陣だけど。
あからさまに貶されたら誰だって怒る。
部族長である前に、国家運営の首長なのだし。
高いプライドがあるから、互いに譲らないのだ。
そして、戦争になった。
適度なプライドは重要だけどね。
「1200年? 知らねえよ、そんなの!!!」
若い人狼が吠えてた。
まあ、諫める首長は無いし。
煽るような者も多かった。
「まあ、いい。お前たちが討ち取るつもりでいる魔女について語ってやろう。――今よりも多くの勇者が必要なこともこの場で告げる。我らが遺しギルドのネットワークを使い、各地に呼びかけ、世界の危機に対抗するのだ!!!」
ちょい話が大きくなった。
いつしか冒険者ギルド主導で、狂気の魔女対策が掻き消えて。
世界を滅ぼしかねない“厄災の魔獣”討伐へと導かれてた。
おやおや~?
◆
その日。
久しぶりにあたしの意識が天界へと導かれてた。
『いつでもどこでも、厄介ごとの中心にセルちゃんが居るのはどういう事なのかな?!』
乙女神のこう、口の中にごもごもした雰囲気の声音が。
なんか食ってるときに召喚を?
『食事中、いいじゃん。話し相手になってくれても』
「いあ、あたし寝てたんだけど?」
起こさないでほしい。