厄災の魔獣と、13英雄たち 1
第三都市“ベレズニク”に滞在して、はや2日。
路銀? 路銀ですか。
ちょっと懐が温かいんですよ、聞いてくださいます。
あちこちの戦場に出没してたらね。
燃え残った天幕や陣屋の中に、これはもう大層な金額の金貨やら銀貨、銀の石ころみたいなのが木箱にごろごろ入ってたわけです。じゃあ、これもいっそ燃やしてしまおうかとも思ったんですが、ソコ。はい、ソコです!!
あたしにも天使が舞い降りてきて。
『もう使う人いなくなったじゃんよ、貰っておきなよ、損なことないし絶対、お得だよ~』
ですって。
うーん。
いつになく財布が重い。
いつも穴空いてるから、さ。
この際ってことで財布も上等な革袋があったんで。
水筒みたいな、こう形状してたような気するけどね。
これに入れたら落ちなくなった。
やったー!!
で。
あたしは今、サウナで大股開きの大開脚中でござ~い。
こう下の穴からもハーブの利いた香りを注入するですよ。
◇
公衆サウナに痴女が出た。
いたいた、こういう非常識な輩が。
北アフリカ多島海の一つにそんなうわさ話があったような気がする。
杉の木板を敷き詰めた床の上で、只今、貸し切り中めいた風のソレ。
外見年齢は十代後半のようにも見えるとの話だけど。
「見っちゃだめだ!」
「おういう手合いは、見られて興奮するんだよ」
言いたい放題。
言われ放題。
あたしの常識は、もともと非常識。
自覚はあるさ、自覚くらいわね。
ま、腹をくくった後じゃあ。
見られて減るものでもないし、まあ、いっかなとか。
考えてもみてよ。
あたしを見て、ムフフしたとする。
はっ、四半世紀か半世紀もしたらしわくちゃになって死んじゃうんだよ。
エルフに50年は...
そうだな瞬きかな、感覚の話で。
50年は50年だよ、長い時間の中の50年。
おっと。
外が騒がしいな――。
◇
公衆サウナのひと部屋を前にして集まる群衆。
冒険者ギルドから派遣された、ベテランのパーティだって言う。
いあ、そう名乗ったからね。
「まずは肌着でもひとつ」
サウナの隔離された中で、膝を突き合わせて裸の付き合いなら大目に見られるけど。
エルフのすっぽんぽと対比はされたくないか。
いろいろと出てるからな。
「洗濯前だからなあ」
渋ってみる。
戦場で小奇麗なぶかぶかのシャツは見つけてあって。
風呂上がりにソレを羽織るつもりでいた。
ま...
下着類は、その、ノーな直穿きとかになる予定なんだが。
「こちらで... 受付嬢が持ってくるで宜しいか?!!」
おお。
マジにお急ぎなご様子。
むむ! ひらめいた!!
これは...いい予感に違いない。
あたしの常識は、もともと非常識――。