狂気の魔女、討伐依頼 3
ギルドの方は奥に受付カウンターがあって、手前のサークル内にコンシェルジュが突っ立てる。
ベテランでも新しく訪れた地域の依頼には少し手間取ることがある。
言葉の壁や、慣習や、周辺地域の国内外問題とか。
これらを考慮して、コンシェルジュが良さげな依頼の手配など差配してくれる。
頼むからには金がかかるんだけど。
さて、と。
先ずは宿だな。
「それでしたら、ここの近くに安全な宿があります」
セーフティゾーンってのは、馴染みになってからだ。
よそ者は、街の人から見てもよそ者である。
外面だけは受け入れてくれるけど、ガチに懐に入れることはない。
まして外で野党、中で旅商なんてこともある。
身ぐるみが剝がされないような宿なんて。
まさにガチャ、運ゲーなのだよ。
「結構、値が張りますよね?」
勿論、そんな声が聞こえた気がする。
◆
デッキブラシの柄に吊るしてた軍旗を回収し、エルフの一党とともに行動するミロムさんは、だ。
あたしを見失ってた。
ひとりで行動させるとあぶない残念な子を、だ。
しかも。
連邦が『魔女の討伐に乗り出した』という知らせも掴んでた。
冒険者ギルドで噂話に耳を傾ける。
「狂気の魔女を匂わせる風貌については未確認のようだ」
と、小隊長が戻ってくると。
野営中の隊員が水筒を手渡してきた。
付近の村で分けて貰った水。
「こちらも似た感じです。ギルドでも詳細に至っていないのであれば、セルコット嬢を回収しがてらに魔獣でも置き土産にすれば、」
ミロムさんが少し首を振って。
「そうとも言えない」
「どちらです?」
風貌か、お土産か。
「前者――ギルドに上位チョーカーで接触してみた感触だと、討伐隊の編成はシルバー以上で、13人のゴールドチョーカーが投入されるって話。となると、セルの背格好はわりと子細に報告されてる可能性がある。アンチマジック・メイジの動員が呼びかけられてた」
恐らくそれでも、あたしの火力を抑えることは出来ないと思うけど。
ないよりはマシ。
続けて、
「そんな実力者を前に、横槍は難しいかも」
一刻も早く、あたしを見つけ出すことに注力するべしで意見がまとまった。
もっとも捕捉されたら、されたで考えると後回しになったようだけど。
冒険者ギルドから各国にも呼びかけがあった。
当然、連邦とは親密な関係にあるハイランド王国にも、だ。
◇
賢者がヴァーサで受け取り、教会最深部にて女帝に手渡される新書。
ギルドから発行された討伐依頼書だが。
同じものがハイランドにも届いている。
王宮内では王が不在なので、書簡未開封処置。
「また大事になりましたね」
食客の魔王ちゃん、他人事のようで。
「だねえ~」
女帝も、だー。