表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
46/538

武王祭 騒動 2

「地獄の猟犬さまが何の用ですかね」

 ドーセット帝国から遣わされた、間者の店は()()以外にも、あるだろって言い訳だ。

 剣士の方も不思議そうな表情となって、

「いや、目についたからだ」

 店主はそれで納得した。

 猟犬こいつさまは道に迷ったのだと。

 帝国の裏稼業のひとつとして、傭兵がある――とは言っても、ギルドを通した戦争屋の傭兵とはちょっと違って、暗殺も請け負う()()仕事ってヤツの方。噂が独り歩きしている、帝国式一刀流は彼らの隠れ蓑である。

 ただし、剣術しか使えない()()も生まれたんだけども。


師匠せんせいが、依頼を...くれるって聞いたから」

 遭遇した時よりも大人しく感じる。

 同胞で、しかも敵意がないんだと分かれば昂ぶりが、抑制されるよう調教されているようだ。

「俺っちのところに送られてきた暗号文は、そういう事かよ...猟犬さま、鼻が利くならもう少しまともな店に行ってくださいましな」

 カウンターの下から、竹の筒を取り出す。

 まあ、カウンターを境に目線が上がった時の店主は、生きた心地がしなかったらしい。

 だって、固まった彼の目の前に抜き身の小剣があって。

 丁度、目のあたりに切っ先があった。

「あ、あれ?」

 まだ、信用されてなかった。

 店主が涙目で真後ろへ、尻もちをついたのは言うまでもない。

「ご苦労、さま...駄賃は、うん...他のアイテムも買ってくから...金貨で」

 王国の金貨で払えとは言えなかった。

 大陸違いの金貨じゃ、使用されている金の目方分で価値を決めてた。

 コンバートル王国の金貨は、金と銅の混合貨幣で。

 金の比率は銅に対して、2:8も水増ししてた。


 他国では、(共通)銀貨10枚にギリギリ届くかくらいの価値だ。

 すっげーみみっちい。

 で、ドーセット帝国の金貨は“小金貨”と“大金貨”って形で流通してて、小金貨は()()って他国、他大陸では呼ばれてた。

 王国みたいに、混合はされていない純金だけど、重さは10グラム程度しかない。

 ただ、それでもコンバートルよりかは...重いんだけども。

 コンバートル王国は金鉱床が無い国だからなあ。

「ま、毎度~」

 店主の歓喜が背中ごしでも分かる。

 手持ちが豆金しかなかった剣士にとっては、ちょっと複雑な気分だ――あれ、この国ではオレ...損してる?――って抱かないことは無い。ニンジンひとつ買うのにも豆金出してるんだから。



 さて、金銭感覚のない帝国の猟犬は王都の路地へと消えたわけだけども。

 あたしは、見事、エントリーに間に合った。

 後日、鬼火の元メンバーから聞いた話では、だ。

 かつての訓練校から紹介状を書いてもらうと...草試合っていう予選をしなくてもいいって話が、さ。

 あって...

「なんで、それを早く言わない!!」

 って、さ。

 元メンバーに唾を飛ばしたわけよ。

「あんたから頼みに来なさいよ! 後輩ちゃんからコッチの話くらい聞いてるじゃろが!」

 拳骨が来ると思って咄嗟に、頭を両手で覆った。

 が、彼女の両手はあたしの胸を掴んでた。

 えっと、こう優しく、ソフトタッチっていうの?

 指先からやや興奮めいた圧を感じつつ、クラゲのような動きで...

「キモイ!!」


「な、何がじゃ!」

 揉み方ッ

 揉むなら、こう...指じゃなくて掌の肉一杯に!

「エッろ?! な、なん、ななななな、なんじゃ、その揉み方は!!!」


「ゆ、指先の方が嫌だよ。恐る恐るってんなら触んな、ボケ! こっちは、次、どーなるんか変わらないんだから怖いに決まってるだろ、が。同性なんだから察しろよ!! いや、こんな()()()触ったって、う、嬉しくな、ないだろ」

 あたしがトーンダウンしちまった。

 だって、革の乳バンドで潰しちゃっては、いるけど。

 いうて、外したところでも...手の中に納まる程度の小ぶりっぷり。

 後輩は“好きだ”っていうけど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ