狂気の魔女、討伐依頼 2
「英雄だと?!」
一堂に会している言い出しっぺ以外が、口をそろえてた。
名前なんてどうでもいい、これが本音で。
とにかく、今は各種族の危機的意識を煽りまくって一つの強敵に立ち向かう姿勢が重要なのだと。
説いて回っている。
ドワーフの長老とその従者も、白い眉毛にごわごわな顎鬚を蓄えてて。
ドワーフってのはエルフ以上に見分けにくい種族だ。
「何人必要かな?」
獣人族が代表して5部族。
人っぽいけど、手足がハーフサイズの“ローディアン”や“ミディア”族が参加。
この二つの部族が人種族の街で馴染めないのは、耳の尖り方に問題がある。
丸耳とか、潰れた餃子耳っぽければ、ワンチャンス。
「他部族で7、土精霊や妖精にエルフも加え、ざっと12くらいか?」
多いなって声が漏れた。
ドワーフの長老を差し置いて、リザード族が横から。
「13にしてくれ。竜種にも声を掛けておきたい」
◇
少し妙な方向性へと進んだけど。
連邦にて辛うじて種が残せていた“エルフ”族は、森や林に隠れ住むタイプじゃない。
もっともハイカラで、物欲にまみれ、肉を好んで喰らう俗物な者たち。
地域や地方では彼らはダークエルフと呼ばれる。
いや、それは偏見だ。
本来のダークエルフは茶褐色の冒険好きな、アウトローどもで。
ルールに縛られない自由人が多い。
あたしのように。
貰えるものがあれば、だ。
給金の分だけ身を粉にして働くものたちだ。
すくなくとも、そういう者。
シティに住み着いたエルフは、さしずめ。
同胞殺しも厭わない傭兵ども。
あたしは“連邦”の第三都市“ベレズニク”へ足を延ばす。
もっとも北に行きたくないからだし。
干し肉ばかりじゃなく。
風呂もメシもまともなものを口の中に入れたいからだ。
しかも、最近火の傍に居るんですっかり日焼けしてしまって――ローブとか帽子がよれて、傷みが激しくなってる。
これじゃまるで魔女だよ。
行商してた旅商人からそんなことを言われてしまった。
間違っちゃあいないけどもさ。
◆
「たのも!」
冒険者ギルドと併設された、防具屋。
珍しくもない。
昔はこんな感じで、駆け出しの子の面倒を見てたものだ。
ただ、第三都市とはいえこんな大都会でのギルドにしてみると、やや小さいような。
「ああ、それな。この町にはギルドがあと二つあるんで、三分割して仕事改革しているのさ」
ほう。
凄いな。
「じゃ、他の」
「一つは武具屋と併設してるし、道具屋兼魔法アイテムを扱ってるギルドも街の北側にあるのさ」
用途によっては何回か梯子するハメに遭うのか。
いいような、無いような?
「だから仕事改革だ!!」
はい。