狂気の魔女、討伐依頼 1
連邦の長老会議。
王都“アルハンゲリスク”で内戦の最中で再び結集したのは初のことだ。
当初は、どの勢力も疑心暗鬼で終結しないのではないかと噂されたものだが。
辛うじて現存する首長たちだけでも終結することが出来た。
あたしも、王都までは足を運ぶことはない。
だって、夏もちかいのに寒いから。
外気温20度以下はお出かけしない。
そんな寒くて、大都市の特徴である人の多い地。
アルハンゲリスクに集まった理由はただ一つ――「狂気の魔女を何とかしないと、ワシ等の生存権が脅かされておる!!」
首長のひとりが、拳を大振りに振り下ろしてた。
巨鼠族の齢、30になる老人。
老人? 老人? 老人ねえ...
「生存権ときたか、そりゃ... まあ、ハイオークの連中にもその、御立派な権利をよ。認めてやればよかったんじゃねえのか? あいつらの集落は、魔女の眷属でも戦争の余波でもない。働き手を一瞬で失っちまって...生きていくことが出来なくって、滅んじまったんだぜ?!!」
毒が吐かれた。
それもとびきりの毒だ。
ハイオークだけでなく、鬼人族だってこの内戦で大きく数を減らした。
ヴァーサから解放された奴隷民だった者で兵を募り、連邦の少ない席の為に殺しあう戦争。
「なあ、狂気の魔女ってのはエルフに害を為したものに等しく... 罰を与えるって言うんだが。巨鼠族らがこんなコトをしで科した訳じゃねえだろ? 誰だ、誰が生み出したんだよ??」
吠えるのは人狼。
人狼族の若い首長で、熟練の戦士たちが――
あたしの炎で消し炭になった。
アルハンゲリスクの南の戦場に、彼らも居たんだ。
帰ってこない先代首長たちを探しに行った斥候が持ち帰った、遺骨で判明った。
「そ、それは...」
言葉に詰まる鼠。
連邦の奥地からスノーキャットの首長も参加していた。
皮肉にも首長の席がいくつか空いたから、参加要請があったものだが。
積極的に内戦に絡んでない種族も、張り詰めた重い空気くらい察している。
「戦争が生んだ狂気そのものだろ。誰がってのは無意味じゃないか?」
「分かってるさ、だが!!」
拳が卓上に叩きつけられる。
まだ、お前には早いと言われて戦地から遠ざけられた。
己の未熟に怒っている。
「時に、内戦そっち除けってことでいいのか? それとも何処かで停戦、或いは連邦という形式も止めるくらいの方向性も考えなくて...」
仕切ってるような鼠を押しのけて、
「終戦にするとなると、英雄が欲しくなるな」
ドワーフだ。
日頃、山の中に籠って滅多に、アルハンゲリスク周辺にも表れない連中。
街に棲み、工房を開くのは世俗にまみれた、元冒険者あがりの者たちだけだ。
「英雄? だと」
「ああ。英雄だ、この内戦を挿げ替えるための強大な敵が出現したんだ。だったら討伐するための英雄が必要になる。眷属の方も一緒に屠れるような戦力が、な?!」
アテの有り無しの話ではない。
そこは作ればいいし、或いは――