あたしたちは、目立ちたい 4
火炎球の魔女として異名を轟かせることはなく。
この大陸に現れた狂気の魔女と、ゆかいな魔獣団ってのがセットになって。
ハイランド王国軍旗は一体どこへ消え去ったのか。
で、だ。
これはこれで戦果を稼いでいる。
方向性は違うけども、エルフを迫害すると。
狂気の魔女が突如として湧き。
抵抗する亜人たちに有無を言わさず、蹂躙して。
生き残りどもや逃走した者たちは、ゆかいな魔獣団によって終焉するというのだ。
「おっかねえ~」
あたしの感想。
◆
カラスが見た物を、つぶさに女帝へ報告する賢者。
『あの子は何をしているのかしら?』
セルコット・オルタは肩を竦ませ、
『わたしに言わんでください。充電が必要なほど燃費の悪い魔王ですけど、セルと意識下で繋がってるわけじゃないんです。あの子が計算をしている可能性はゼロでしょうけど』
たぶん、エルフを怒らせると怖いぞって宣伝には繋がっているはずだ。
エルダーク・エルフが付いているのだ。
制御を期待するしかない。
「本当に陛下の手の者って訳じゃないんですよね?!」
賢者の事実確認がしつこい。
「では、仮に。仮にだが、何が問題だ????」
ヴァーサ王国内の教会に。
ハイランドの女帝が滞在している事実は伏せられてある。
「ま、不可侵と相互協力という条約に署名している我々には、“連邦”の領内に無断で兵を活動させる為の大義がないってことです。この場合のペナルティは、我が国は約束を反故にする野蛮な者たちだと自ら表明したことになります」
うん?
え?
は?
三者でそれぞれに呆けた声が漏れて。
「い、いや待て。仮に我らが掲げる『同胞の救済』だが」
賢者は大きく首を振って、
「内政干渉だと言われたらアプローチのしようがありません。エルフは土地の氏神みたいなもんですし、退き払ってハイランドに住んでいた者が行商で、かの“連邦”の内戦に巻き込まれたのだとすれば、大義名分も立つでしょう。国境線の向こう側の同胞が帰属を願い出ているからと言って、兵が動けば即、戦争なんですよ!!」
あちゃー。
おや。
「帰属したいと、言って」
「その土地はまんま、国家にすれば領土です。国家に属する市民であれば、その土地は国家の共有財産で、土地に住む権利と開拓や開墾などの多用途に使用する権利だけが与えられているだけに過ぎないんですよ、ですからもしも、です。帰属したいというのならば、先ずは組する国家から独立して... できれば波風が立たないような方法で――その後に我が国に編入される道がもっとも理想的な帰属スタイルだと、わたしは考えます」
お、おう。
女帝が魔王ちゃんの袖をひっぱり、
念話のジェスチャーを見せてきた。
『やっぱ、アレ、無しで』
『何をです?』
分かってて聞き直して。
セルコット特攻だけが受理された。
これが軍旗が戦場に立たなくなった理由である。