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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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カラスが見たもの、3

 あたりを見渡して――「これ、夕暮れに近いんじゃない?」

 あたしの言葉に反応した小隊長が、咳ばらいを一つの残して。

「セルコット氏がトイレに1時間も賭けるから、出発の時間がズレ込んだのですよ。もっと自覚を。魔女か或いは、聖女としての自覚を持って頂きたいです!!!」

 うー。

 耳が痛い。

 この正論には、ミロムさんも頷いてた。

 あたしの味方が居ない。

「(ミロムさんは相槌を打ちつつ)野宿する?」

 四次元から取り出した“大剣”の柄を握り直しながら、じっと薄暗い大地の先に視線が向けられてた。

 なになに?!

 まさか、亡霊???

「いえ、野獣かと」


「あ、ええ。数は然程、気にしなくていいですけど囲まれると。随分と厄介なような」

 野獣に食い散らかされた躯に悪霊が憑依すると。

 即席だけど死霊アンデッドが出来上がる。

 動ける死霊は浮遊する霊や、魂魄を喰らって成長して――悪霊ワイトや上位の邪霊リッチへ変貌する。

 あたしたちのレベルを基準に見た時。

 そうしたノーライフキングどものは敵でもない。

 むしろ羽虫だが。

 鬱陶しいという言葉の似合う羽虫。

 つまり害虫の()()に等しい。

「ねえ、セル」

 ん?

 抜刀しかけてたミロムさんの大剣が再び四次元に納められ。

 まったくマジでどこに仕舞ってんだか。

 すっかり手元からなくなって。

「いっちょ、火炎球()()()くれないかな?」

 は?!

 耳を疑った。



 ちょ、ちょいちょい。

 あたしは火炎球のバリエーションが多いだけの、火炎球しか投じれない魔女だけどさ。

 いあ。

 火炎旋風フレア・ウインドって名付けた、炎症を伴うスリップダメージがメインの魔法は使える。

 これを発表して、学校で大いに笑い者になったっけなあ。

「火力は? 実のところイメージ的には漠然とした火力調整しか出来なくて。LOWあたたかいHIGHあついの二択だけなんだよね。で、どっちがお好みなのかな」



 ミロムさんの提案はシンプルだ。

 すり寄ってくるゾンビと、死霊どもと飢えている野獣、魔獣の一掃だった。

 もちろん火力はHIGHだ。


 ガスコンロのつまみに。

『止』と『弱火』、『強火』しかないとする。

 あたしのはソレなんだよ。

 なぜか『中火』がない。

 まあ、イメージできないんだよなあ。

 きっと前世のせいだとおもう。

「肉が焼けた匂いを嗅ぐと、なんかお腹空くもんだね」

 今、あたしが焼いたのはゾンビだ。

 エルダークの小隊長さんの顔が引きつってたのはスルーして。

「これでお腹空くなんて、セルは大物ですね」


「そうかなあ」


「それは皮肉です」

 あらら。

 そっか。

 あたしはズレてるのか。

「モップの先の旗印の効果的な活用法が必要です」

 戦場の跡地に来た理由が実のところ、ソレなのだが。

 今のところ宣伝が出来ていない。

 追い剥ぎを生業とする小悪党たちに、だ。

 軍旗を見つけさせて、噂させるつもりだった――そうです、そう。あたしの出発が遅くなったせいで。彼らが活動しているであろう時期、時間帯、その他もろもろに出遅れたのだ。

 だから誤ったのに。

「じゃ、じゃあ」

 あたしから提案。

「エルフの廃村を見に行こうよ!!」

 これは、失敗だったと現地で思った。

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