世界を灼いた女 2
「なら、いい素材がある!」
ここにと言わんばかりに、
魔王ちゃん下へ、目を白黒ぱちくりさせる“あたし”と“ミロム”さんが。
ついさっきまで、ゴーストタウンで。
屋根のある一軒家にあったのだが。
なんでなん?
「あれ?」
驚きの魔王ちゃん。
召喚する筈は、あたしだけだったようだが。
「あれじゃない。なんだ、この雑種みたいなエルフと、人間は?!」
女帝を前にして。
あたしはパジャマで。
ミロムさんはメイド服。
ちょうど就寝につくか、つかないかの秘めたる遊びに夢中に。
「えっと」
ささやかながらに。
今、すぅーっと腰のあたりがゾクゾクする寒気を感じたところで、あります!
「おっとこれは失礼致しました、陛下。これなるは今世の乙女神が使徒、聖女さまと...じゅ、従者かな? いえ、従者ですね、従者に間違いございません!!!」
ひどく動揺しているようだが。
魔王ちゃんに無理やり召喚されたわけだ、これ。
ミロムさん共々あたしらは被害者だ。
「聖女? エルフがか」
魔王ちゃんの背にちっちゃいエルフ。
純血のかあ、隠れてても可愛いお耳がひょこひょこ動いてる様子。
しかし、だ。
あたしらの目の前のには、怖い表情のハイエルフさんいるし。
目を背けたい。
いや帰りたい。
「この者、火炎球の魔女と申しまして」
――忌み名だ。
戦場において二つ名は有名・無名に限らず、あるだけで兵が委縮する。
「火炎だと?!」
あ、いや。
エルフが火を使う?
冗談は止せよって流れだけども、森を灼くような火力の火属性魔法が使われないだけで。
エルフだって生活に必要な火くらいは使う。
マッチだって作ってる一族もあるし。
「で、どの程度の火力がある?」
うん?
なんでノリ気に。
◇
試験運用――そいつは、工場からロールアウトした製品が、だ。
安全基準内で如何ほどのパフォーマンスを発揮するか、っていう流れの評価試験で。
クライアントが納得すれば...
あたしは実戦投入される運びとなる。
えっと。
「なんで、なん!!!」
心の声が魔王ちゃんに唾を飛ばす程の勢いで吐き出してた。
「旧き魔女を集めるため。ロウヒは街に籠ってるって噂だったからすぐに見つけられたけど。他の絶対関わりたくない引きこもり連中の噂はぜんぜん見えないし。聞こえてこない」
徹底的に潜っている連中の尻を叩くには、ロウヒの勧誘が必要だといった。
なぜか。
彼女が人探しの名人だからだ。
「占いの的中率は“神の賽子”でファンブルが出ない間だけ、クリティカルに的中させていく。時空の狭間や、それこそ魔界に逃げていても的中させて、見事にわたしたちを導いてくれる。ついで、ロウヒちゃんは見た目がとても可愛らしい(本人は酷く怯えている様子で、顔が真っ青である)ので膝に置いててもいいし、抱えててもいい。ちょっと獣ちっくな香りがするけど」
すんすん嗅いでらっしゃますもんね。
目端に涙浮かべてるし、可愛そうである。
「じゃ、まあ。そういうことで」
「どういう流れで?」
細かいことは気にするなと、突き飛ばされて。
あたしは緒戦から戦場に立つことになった。