世界を灼いた女 1
女帝と睨み合ってた魔王ちゃんは、にたりと微笑した。
「な、なによその微笑み、ちょっと気持ち悪いんだけど?」
その場で、仰け反ったのは女帝の方。
やや引きつりながら、
「女帝さまは、エルフの国が舐められないようにしたい、と?」
ハイランド王国が動くのは軽率過ぎるって、王宮内でも意見が割れていたことで。
じゃあ、このまま同胞が苦しめられるのを黙って見ていろって言うのかーって、啖呵を切ったところで。
彼女は頭をフル回転させて..
大魔女ロウヒの方が知名度的として申し分が無いと、至ったというわけだ。
戦場での悪辣な呼び名なんて敵対勢力を委縮させるのに好都合だから。
そのための神輿で。
そのための魔女だ。
「ええ、そうね」
女帝はこくこくと頷き。
ロウヒが差し出した茶をすする。
「あら、美味しいじゃない? ロウヒちゃんの」
彼女は強張りながら、
「こちらの魔女です」
◇
何時間経っただろうか。
ロウヒの街の外では激しい小競り合いが続いてるし。
連邦内の北に南に、東と西とそこらじゅうで大火が出ている。
周辺に散ってた小市民たちが魔女の街へと逃げ込んでいる有様で――「確認させてもらいますね」
と、魔王ちゃんが手のひらを女帝に向けて。
「知名度が必要だと、これ間違いないですね!!」
ロウヒは激しく抵抗して。
まあ、想像に難くない。
彼女は働きたくないのだ。
できれば怠惰に過ごしたいと思っている、引き籠もりニート的な思想の持ち主だ。
「そりゃ、無理だよ。その考えは、今のこの時点では許されない!!」
魔王ちゃんは意地悪で告げたわけじゃない。
ハイランドのハイエルフが彼女を使わないんだとしたら、組する連邦のいずれかの勢力から似たアプローチが掛けられた。
今のところはハイランドの女帝に譲ってるところ。
「え~ そんなあ~」
「ま、ハイランドが口説き落とせないなら誰が、口説けるんだって流れにはなると思うけども。その時は“呪い”も含めて焼き払う覚悟じゃないかなあ。たぶん、その時は勢力が一時的に結束して事象に当たると思うんで、諦めて」
なにをーって口を尖らせて叫ぶロウヒがあって。
同じエルフなんだから、同胞、助けたいと思わない?って魔王ちゃんの説得。
これは説明かもしれない。
「で、ね!」
「なんか嫌な予感しかしないんだが」
察知する異能力の高さはエルフの王だと、褒めたたえ。
「異能力ではなく、ただの経験則だよ。宮廷にもヤバイ考えの魔法使いが居るからね。あれも、わりと危ない橋を渡るのが好きでねえ、いっそそういう変な趣味なのかなって思ったりもしたものよ?」
ふふ~ん。
魔王ちゃんは立派な変態さんなんだよな。