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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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北方・三王国時代 ハイランドの台頭 8

 東部国境から引き揚げた国境警備隊は、6千人。

 遠足は、家に帰りつくまでが遠足だ――などと言うように、将軍とその幕僚らは、直下の配下とともに、農奴兵や戦奴兵に加え、農民兵に「王国軍しょくんらの義務は、王城広場で派遣任命を受けた地で解かれる! 故に、その地までは将軍の指揮下で戦功を挙げよ!!」だ。

 王都を目の前にして、壁と立ち塞がる公爵私軍に対して。

 自分たちは正当な軍であると、今一度、暗示をかけたわけだ。

 国境警備の任務期間は2年。

 彼らはその任の半分も消化していないし、同時に任じられてた他の兵とも一戦交えてもいた。

 農奴や戦奴は、主人に従わざる得ない。

 しかし農民兵は違う。

 彼らは疑問に思ったのだ、自分たちは正しいのかと。



 6千人の前に対峙する“ヘルシンキ”公軍。

 王都にギリギリ置けた兵は500余りと、傭兵をかき集めて400と少し。

 冒険者にも戦闘参加は任意の頭数として100少し。

 いやいや。

 少ない。

 土嚢を積み上げ、陣地化まで。

 実際に戦えば6千の圧力で最初の突撃は持ち応えるだろう。

 2度目はない。

「地図の上でなら隣の領だが、軍師殿の言伝が無ければ」

 公爵の身支度が間に合ってない。

 指揮所の奥で、鎖帷子に甲冑と用意された兜の緒を締めていた。

「報告!」

 伝令兵も厚手のコートに赤い制服のよう。

「うむ」


「ハイランドの軍旗がこちらへ」

 参戦している兵の将帥らが湧いた。

 ハイランドの参戦に対するものと、千騎兵の勇猛さにだ。

「誠、こちらにか?!」


「はい。まもなく百人将と副官の方が参られるとのこと。で、先方より、公爵さまと直に詰めたいことがあると申されて――」

 百騎の軍鹿騎兵でも、歩兵にとっては驚異的だ。

 対する騎兵にとっても厄介で、かつてのヴァーサが誇る装甲騎兵は確かなる教訓を得ている。

 ハイランドの軍旗は()()()役に立つ。

 エルフ本人たちよりも、周囲が怖がってくれるからだが。



 しばらくして――

 指揮所の隣にプライベートな天幕が作られた。

 土嚢だけで積み上げられた小さな砦。

 包囲されれば。

「拝謁、感謝します。ヘルシンキ公閣下」

 第一声は、百人将。

 声音は幼く品があり、心地の良いもの。

 はて、何処かで聞いた声とも。


 将は兜を取って、

 短く切り揃えた艶やかな髪と、編まれた束が肩にかかる。

「ひ、姫...」

 彼女が人差し指をあげて、止めさせた。

「いいえ、人違いです。公爵。御前に在られる()()なるは、ハイランドの百人将“エイル”と。我らが賢者、宮廷魔術師より助力せよと仰せつかって参陣した所存です」

 公爵の目が何かしら訴えてるようだけども。

 彼女はその目を見て小さく頷く。

「...左様か。これが、私と直の面談な...訳ですね?」


「はい」

 納得はしたけど。

 小首をかしげているようなので、合点とか。

 そうした域には至っていない。

 ノル・ファールンの策略だとは思っていないのだろう。

 未だ、符合しないだけかもしれない。

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