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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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北方・三王国時代 ハイランドの台頭 4

 魔女ロウヒの街――


 幼女みたいで舌足らずな喋りをする、神代からの大魔女ってのが定説で。

 世界をいた魔女とはまた、一線を画す。

 おなじ魔女でも格が違うとのことで。

 いや。終末論の最たる、悪魔の王と同一視される人物と、比較されたくないってのが本音だ。

 魔法に長けた者たちも。

 一斉に明後日を向く。


 目さえ合わさなくなる。


 さて。

 “連邦”と国交を結んでいる、ハイランド王国であっても“ロウヒ”まで到達した記録はない。

 一説によれば、だが。

 ロウヒの街は“連邦”の中でも主要な()()のひとつだと数えられている。

 南北を結ぶ街道の中心地にあって。

 広大な森林資源と、肥沃な農地がある。

 ハイランドで改良された穀物の生産量嵩増し技術の導入も積極的に行われたとかで。

 豊かさの基準が1段階上がったとか。


 ここまでは、表向きの噂噺による。


 実態としては。



 傷だらけのコボルトが放り込まれたのは、風呂だ。

 焼いた石に水を掛けて、立ち上がる蒸気で室内をく。

 これを蒸し風呂という。


 温泉水を引き込むのは手間がかかるし、湧き出している近くで街づくりも容易ではない。

 と、すれば必然的に蒸し風呂の方がリーズナブルなのだ。

 コスパは採用地で実証済みである。

「直接、体を洗うわけじゃねえが」

 オークのお姉さんに代わって、弟分がコボルトを男湯へ導く。

「足元、段差。あるぜ」

 ロウヒ名物、薬草蒸し風呂。

 魔女ロウヒは治癒士で有名な人物だったから、街の特産も薬草、香草、命の水ってほどの酒である。

 ハイランド王国の使節団が訪れる街にも“()()()”がある。

 なるほど、ロウヒで醸造されたのだとすれば納得。

「驚くべきはその、傷だな?!」

 利き腕の肩から鎖骨を断って、止まった形跡のもの。

 これの()()で利き腕は動かず、元の持ち主は蛆虫に傷を食わせて対処した。

 上手くすれば膿むはずの部位も蛆虫が。

 しかし上手くはいかなくて身体を手放したのだ。


 そこへ――


「ふ、奮発した... 鎧の御蔭だ」

 訛りのある地方出身を装う。

 さすがに蛮族の地方語は分からないから、ここはイントネーションを変えて。

「コボルト族は手先が器用だっていうしな。しかし、残念だなあ」

 腕の具合は悪いようで。

 オークの指先で摘まんで、持ち上げて、放すのひと動作で深い溜息が吐かれた。

 状況は最悪。

「腕のいい治療師はあるが、今は隣国から同胞たちが解放されてな」

 首をかしげて見せた。

「奴隷だった連中だから自身の価値観が低くて叶わねえ。長年の主従関係ってのは、一種の宗教みたいなもんだからよ、晴れてお互いにハッピーで足枷、手枷、首輪が取れて自由だぜっても心にまで響かねえもんだって知っちまったとこさ」

 オークは重労働に。

 オーガは戦士として。

 コボルトやドワーフ、ハーフリング、ゴブリンらは職人で。

 ワードックやワーウルフなんかは衛兵に振り分けられて、各人の人生を謳歌している。

 それができるぞって啓発して回ってるのが治癒士だ。


 奴隷が逃げて連れ戻されると、身体の一部を失うシステムが。

 ヴァーサにはあった。

 国法で定めた罰則でなく、ローカルルールってやつだ。

 奴隷は総じて王国の有形財産だって謳ってるんだけど。

 地方のルールまで目が届かない。




 いざ、解放してみると。

 “王国”への怒りしか湧かなかったという。

「納得は出来ないだろうけども、その腕、切断になっちまうかもな」

 これ、すでに本人が他界してて良かったかもと。

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