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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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北方・三王国時代 ハイランドの台頭 2

 ヘルシンキ公爵は、ヴァーサ王の縁者。

 自領にはよく鍛えた私兵が万単位で用意されていて、王国全体から見ても肥沃な農地が広がっている。

 身内贔屓しない王なら、きっと面白くないだろうな。

 三国最強の奴隷兵って最終兵器があるのに、だ。

 身内の芝生が青々としている事実と、底なしの傲慢さが仇になる瞬間。


 守るべき市民が敵になる瞬間とき

 公爵の背は誰が守ってくれるのか。



「それって」


「好色王はアテにならないから、姫妃にも舞台に上がって貰うんだよ。ま、もちろん彼女は世紀の悪女だ。表立ってではなく...我が国の百人隊長として英雄になってもらうのさ」

 苦肉の策だ。

 苦肉だが幸いに、この姫、いや...幼い妃は公式以外表に出てなかった事が、だ。

 幸運だった。

 これで()として、乳母一人になる寸法。

 そもそも王族の篭絡から始めた一手なのだから、篭絡した者が残って当然だろう。


 それでも。

 姫妃を王城から出すのはわりと力業になりそうだ。

「ふむ(短い舌で唇を舐める)、侍女にはわたしのような幼き女性もあるから服を用意させられた...が。(下からずいっと、上目遣いにのぞき込んでくる圧が幼女にもあって)その、百人将なる部隊長か? わたしにも務まるのかい?」

 もっともな質問だ。

 教会の2階を宿舎にしていたお蔭で。

 密会は教会内で行える。


 乳母には『陛下に新たな男子が()()()()、御爺さまの国盗りが助かるかも』なんて吹聴して信じ込ませてある。

 こういう調略は欲深い人間に効果的で。

 その先の幸せな夢でずっと妄想できるのだから。

 なんというか...

「えげつないっすね」

 言うな、弟子よ。

 姫の眉間に皴が。

「国母になる夢まで見せたの、王権と一族を貶めるのはこれくらいで十分じゃない? もっとも乳母の家も子爵家で、紋章院に貢献した騎士の者。生国の乳兄弟たちも立派に騎士爵を拝して、国王に仕えていると聞き及んでいるから。いずれにせよ(遠い故郷に視線を向けて)乳母あのひとは幸せなのよ」

 喧嘩王の手駒となった女に、生存権は無いだろう。

 王族を篭絡したのだ。

 それなりの代償が払わされる。

 良くて毒殺か。

 あるいは姫妃として死ぬか、だ。




 こちらは後者を狙っている。

 姫そのものは火種になるからで、喧嘩王の大義に真っ向から拒絶できる生き証人でもある。

 生きていた、或いは、生きながらえた。

 こんなフレーズで燻って火が風に乗って大火になる。


 謀略の王でも心休まらんだろう、な。

「それで、囲うんですか?」

 いや。

 むしろ、陛下へのお土産にちかい感覚だな。

 彼女の真似でもして――「いい娘を見つけてきました、陛下のご幼女に如何でしょうか?」なんて突き出してみるのも一興かもしれない。あの人、かわいい物好きだからなあ。

 得体のしれない爺の孫、面白がって手懐けちまいそうだな。

「利用するためだ」

 ここはドライに返しておこう。

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