北方・三王国時代 乱世 10
「他人事ながら、そんな言われ方は流石の余も...孔のある身で悲しくなるぞ?」
賢者の咳払い。
除け者にされた分のお返しだったんだけど。
あしらわれた気分で。
「かの好色王には実子でハーフエルフの王子が居られます。御年は12歳、王位を継がれれば――エルフの宗主であられる陛下は、かの者の縁者となれましょう!!」
強引だけど。
ハイエルフがエルフの祖というのは、中らずと雖も遠からずな話で。
辿れば何処かで遭遇するくらいの親戚みたいな関係だ。
エンシェントと呼ばれる古代種に。
エルダークって闇落ちしたっぽいイメージのエルフ族もかつては存在した。
神から人の時代へと移り変わっていく中で、変容していったからだけども。
たぶん。
人がとにかく自分たちの考察できる範囲。
観測できる次元とか時間とか、空間めいたものの物差しで判断できれば。
多少の強引ともいえるへ理屈も信ぴょう性を帯びるかな~って。
賢者は察してほしいと切に願ってる。
「好色王がぞっこんの姫妃はどうするのだ? 契りを結んでいないとはいえ。少なくとも幾日か寝て待つだけで、喧嘩王の掌中に転がり込む王国と玉座のことだ。簡単に手放さないと思うのだが」
承知している。
ただし、姫妃の我儘に振り回された挙句に国が傾いてきている事は。
官僚から高位貴族だって理解してるし。
憂いている者は恨みをため込んでいるはずだ。
暴発するのを待っている可能性だってある。
いや。
孫娘が害されることが引き金かも知れない。
そうなれば、
「怖い話だな。身内をも駒という事か」
「その可能性も捨てられません。単に、連邦あるいは組する獣人族たちが決起する――陛下と連邦の友誼を声高に非難しながら、ヴァーサに助力するという計画であるかもしれませんし。今なら、連邦の使者に働きかけ、奴隷兵の任を解くのに待ったが掛けられないでしょうか?」
一時的に、だ。
少なくともヴァーサは放っておいても内戦に突入する。
ノル・ファールンの野心家なら火種はいくつも用意しているだろうから。
国軍の弱体化も待ったなしだろう。
「その方?」
「これは推測ですが、すでに篭絡された将や、後戻りが出来ぬ士官などが居ると考えております」
奴隷兵が解任されなくても、国軍からも好色王に『否』を訴える者たちが出る。
謀略ってのはそういうものだ。
さて、ハイランドにはどの段階で渡りを付けるかだが。
「なあに、お前が我が精兵の千騎兵を持っていけ」
「は?」
抜けた声が出た。
チェストの上で何度か座りなおしてて、だ。
「な、なにを」
「いや冗談とか申し付けておるんじゃない。そろそろ、条約の交渉時期だろ?」
それは未だ10年も先の話で。
「エルフにとっての10年なんぞ、1年にも満たぬわ。賢者もすっとぼけて、交渉に来たとでも言っておけば何日も滞在できるじゃろ。まあ、ソコで糧秣は好きなだけ持っていくが良い!」
ああ~、そういう。