表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
420/511

北方・三王国時代 乱世 8

 ハイランドに意識を戻した賢者の前に女帝が。

「よい夢は見れたか?」

 うたた寝みたいなものだけど。

 仮にも男性の部屋に女性代表みたいな、陛下が足を運ぶのは異例である。

 噂好きの侍女なんかが見たら。

「そのあたりの詮索はするな、たとえ、何もないことが分かっている賢者おまえ自身もだが。知れば後戻りのできない負の感情に吞まれぬとも言えぬでな。して、魔法長者の我らがエンシェントに仕える人外なる子よ――お前の千里眼で見えぬものはないと思って暫し問う」

 少し気を遣ったような口調が気にかかるが。

 賢者はチェストの上で座りなおしてた。

 ベッドで横になるほどの楽な姿勢は必要がないから。

 少々固いチェストの上にクッションを置いて横になってた。

「さて、見渡せる距離や...ま、時間などにも阻まれることの多い不完全な眼ですが」

 ちょっとした前置き。

 何でもできますよは、古代種のハイエルフを前にして不遜すぎる。

 ここは少し遜るくらいがちょうどいい。

「言葉にもないことを。よい、今回は赦す、余が求めるは南の王国のことだ。ここ最近の様子について」



 ハイランドの暗部とて、ハーフエルフなどの亜人が中心だ。

 ナーロッパ極北の大地では、三国ともに亜人への保護政策がまったく違っている。

 ハイランドとノル・ファールンは寛容、いや寛大で後者の王国では玉座を温めているのが、亜人だって話もある。

 最も極北統一を掲げている以上は、国王から一丸となって。

 ()()()()()()()()()()()()()

 この政策に賭けているということなのだろう。


 そこで別の道を行く、ヴァーサ王国だが。

 亜人を奴隷身分にして見下してた政策以外は、もっともノル・ファールンの考え方にちかい。

 安い兵力に国軍の主力を担わせすぎてた。

 これが今、崩れようとしている。

「――安い労働力に甘んじてた当該国は、本来、この平和だった時を利用して、次代に向けて農政改革を行わなければならかった筈です。しかし、低賃金で代わりにキツイ仕事を熟す底辺層の移民、流民が熱心に技術を磨いていく負のスパイラルに。また、農家たちは意見具申に耳を傾けることがなかった」


「見てきたことを言うのだな?」

 女帝のは揶揄いだろう。

 千里眼だと言って、賢者が他国に分身を送っていることを知っているかもしれない。

 が、ここでは微笑みながら賢者の言葉を待つ。

「見てますとも、こう目の膜がからからに干からびれる気分で見ていますとも――かの国が飢饉に喘ぐのは、そうした国内の膿によるものだと思われます」

 拍手。

 やや控えめだけども。

「面白い考察だが、かの国の第二妃、どこの出か知っているか?」


「南方の国の出とか?」

 瞼を閉じて静かにうなづき。

 女帝が顔の半分を扇で隠しながら――

「あれはな、ノル・ファールン喧嘩王の孫娘だそうよ」

 思わずチェストが滑り落ちかけた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ