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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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北方・三王国時代 乱世 7

 ヴァーサ王国の抱える問題は、国内外にあるという。

 国内では第一次産業の疲弊が目立ち、国外から輸入されていた麦の価格に押し負けて負のスパイラルへ。

 内政の不安定さに、国王の第二妃として迎えいれた異国の姫というのがある。

 これがとんだ浪費癖があって。

 国王の財産と国庫は別なのだが。

 そんな区別も関係なく消費したのだから、王権が揺らぐのも仕方がない。


 そこへ日頃の亜人政策が仇になって。

 ヴァーサよりはるか東にある亜人の国から――『亜人たちの救済にご協力賜りたい』。

 国王は異国の姫に()()()()()を見せようとしたのだろうという、邪推が入るのだが賢者も似た考えに落ち着く。

 かの王は、これに賛同し。

 厚かましくも『穀物の支援をお願いしたい』なんて要求を通す。





 使者とのやり取りは公表されないけど。

 お触れは出る。

 亜人を囲う者は、これを解放して国を助けよ! 諸君らには麦を与えよう――とか。



 王都を守る城壁から様々な彩の種族たちの塊が見える。

 上から見ると板が縦に幾枚も流れていくようなイメージだけども。

 あれはすべてが亜人だ。

「王都からは?」

 老魔法使いは秘書の部下に問う。

「第一陣で1万ほどですね」

 1万人が職を失い、業態によっては労働力が喪失した。

「連邦にはとてつもない策士があるぞ!!」


「え?」

 王国の社会構造は圧倒的に、亜人を見下した形になっている。

 今までは対岸の大陸や未開の地域から逃れてきた移民者を受け入れて、王国はより強固になった。

 繁栄の極みに至ったのは安い労働力を提供した移民たちに寄る。

 その層がごっそり抜け落ちる恐ろしさ。

「大臣たちも同じことを!!?」

 畑の手入れを人任せにしてた者に、次の年も同じ収穫量は期待できない。

 それは町の中のサービス業から生産業にだって同じことが言えた。

「対価は穀物だけでいい」


「大臣たちに由れば、問題の解決にならないと」

 そりゃそうだ。

 奴隷たちは王国の職人何十年分の知識も持ち出しているのだ。

「次は兵役にある者たちだろうな」


「なぜです?」

 国防の担い手、主力の歩兵が奴隷兵。

 英雄王スチールをも退かせたのがこの死をも乗り越える歩兵たちで。

 生きて帰れば一兵卒として指揮官になれる。

 そんな餌をぶら提げて戦わせてた。

 まあ、もっとも。

 実際に市民階級になれた元奴隷は数える程度。

 実績があるので人は信じるわけだ。

 その奴隷兵の数は、この国の防衛根幹に関わる大事な情報だが。

「あの王ではなあ」


「は、はい。あの王では」

 後日、誰と申しわせたのか。

 連邦の大使節団は、その懸念をついてきた。

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