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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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北方・三王国時代 乱世 4

 ヴァーサの南方国境には、ラドガ海という海峡がひろがっている。

 対岸には中央大陸の北方地域があって。

 ここいら一帯の士族たちを豪族と呼んでいる。


 両地域ともに海峡を挟んだ物理的な国境線というのは、なかなかに侵しにくい。

 かつて諸豪族を束ねた英雄のような、武人が現れたことがある。

 この時代の中心は、北方三雄であって。

 数百年後のナーロッパではない。



 この武人の率いる諸豪族軍はそれなりに強かった。

 結果を言えば、まだ、力不足。

 ナーロッパ神話時代を支える物語サーガに対しては抜きんでた()()ではなく、世界が魅せる一時的な気の迷いのような、特別なことで――ヴァーサ王国だけで対処できてしまった。

 もっとも炊きつかせたのは対岸の者たちだ。

 いあ、正確にはノル・ファールン王国にあった、秘密結社“煙水晶スモーキー”による仕業だ。

『あれは短慮だった』

 賢者が頬杖をついて物思いにふける。

 本来の軍事研究なんかに手を付けずに、だ。

 将校や士官らが不思議そうに見ていたのだけども、お構いなく。

『陸続きであれば英雄“()()()()”も活躍できただろう』

 今から100年と少し前。

 神代の阿呆どもが残した“魔神の心臓”という爆弾めいた術式により。

 世界は滅びかけた。


 ま、これらが発端で勇者6人を捧げれば、邪神という異界に干渉できるのではと“結社”は考えた。

 実際に実行したのは“紫水晶アメジスト”の宗主その人だけども。

『魔神の~も、宗主が「面白そうだから」だったか。てめえらの探求はてめえらで...って示し合わせたもんだが、世界を壊すなんて聞いちゃいねえしなあ。もっとも、その世界が危機と判断した折には、自浄作用が働くってのは理解した。狂人どもめ、次はそのギリギリを攻め始めやがって』

 頬杖をやめて。

 額を激しく卓上に叩きつけてた。


 英雄王“スチール”に限らず、各地には魔神騒動の頃に顕現した“13英雄”がある。

 いや、もう代替わりしているのもあるだろうから、その血筋の者たちと言い換えよう。

「おい、そこの将校キミ!!」

 羊皮紙で作られた書籍は重い。

 何せ大変な労力コストを掛けても所詮は獣の皮で出来ている。

 重ねて束ねれば箱型で運びやすくなっても、木綿紙と違って嵩が増していた。

 劣化しないようにとか、あるいは紙が歪まないよう、重しとして表紙・裏表紙はさらに厚く誂え。

 せいぜい2冊も持てば腰にクる重量となるだろう。

 そんな書籍を運ぶ、王立書館の将校だが。

「は、はいぃ!!」

 声を掛けてもらえるような身分でもない。

 客分とはいっても国軍兵の訓練教官で、千人将の肩書もある老魔法使い。

「英雄王についての書はないか?!」

 気になると調べたくなる性分は治らないようで。

 賢者の賢者たる資質なのだろう。

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