表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
414/515

北方・三王国時代 乱世 2

 “煙水晶スモーキー”の賢者は同時にもう1か所、人知の及ばない離れ業をやってのけることができる。

 ヴァーサ王国の軍事顧問という魔法使いが今の身分。

 客分扱いで兵士の訓練や将校の育成に努めている傍らで、自由な研究ができるという肩書だが。

 多少厄介な研究をしていても。

 王国としてのスタンスは――「そんな者は知らない」と、押し通せると考えていることだ。



 ハイランド王国とヴァーサ王国の位置関係は、かの国の南側にあるという点。

 主要交易港を押さえているヴァーサにとっては海運業は国家収入の要であり。

 まあ、生命線である。


 で逆に、三国を結ぶ主要街道はハイランドが掌握している形で。

 対岸のノル・ファールン王国とどう同盟を維持するかで、国がひとつ消えかねないバランスだ。

「――また、羊毛の値が上がったそうだぞ!?」

 場末の酒場。

 女中のひとりも居ないので、ほぼ飲みたい奴はセルフで行動する。

 先の()()は、海上警備から戻ってきた衛兵のぼやき。

 これはまあ、帰りを待つ女房殿の愚痴が夫の口から漏れ出たものだが。

 海上封鎖されているなんてのは初耳だ。

「先週は、果実だったか?」

 ヴァーサよりも南方にある国々は“どんぐり”のような船で交易している。

 対波性は高いが、速度の出ないタイプが多い。

 代わってヴァーサ王国が鍛えた船大工たちの仕事は見事だと称えられる。

 海竜か、水龍などを髣髴とさせる頑丈なつくり。

 海を切り裂いて奔る疾走感。

 特産品の装飾宝石や、鍛え抜かれたドワーフ産の武具や防具などがを、一度で大量に運ぶことができる。まさに革命的で、想像を絶する美しい佇まいがあるという。

 まあ、デメリットがあるとすると。

 操作する水夫らが多いので人件費が嵩むという点だ。

「海賊が出ているって噂も、聞いたことがないよな?」


 衛兵の声音に耳を傾ける者があった。

 対岸の卓上で腸詰肉を転がす老体で...

 客分の魔法使い――“煙水晶スモーキー”の賢者が居合わせてて。

 実験三昧だったから息抜きに外に出た。

『興味深い話だ』

 いつかの何処かというタイミングで、戦争の火種は育ててみようと考えたことがある。

 今、まさにヴァーサでその企みが進行しているような、そんな気配が。

 いやきな臭さを嗅ぎ取ったところだ。

『ハイランドの王位継承に絡む物か、あるいは...』




 酒瓶を下げに来た酒場の主人と視線が合う。

「爺さん、あんまり飲むと毒になるぜ?」

 酔いたい訳じゃないから切り上げてもいい。

 ただ、スペアリブは絶品だったから、麦酒の1、2杯は煽りたい気分で。

「じゃ、もう1杯」


「最近、麦もちと、高くてなあ」

 便乗値上げじゃなかろうな、と。

 顔に出そうになって俯く。

「ここからは少し高くなるが?」

 駆けつけ三杯までは通常料金。

 飲み放題セールなんてないから追加料金は割増しになる。

 まあ、もっとも。


 ワインは気が抜けたらOUTなんで飲みかけのブレンドなんて汚い話はなくて。

 麦酒は肩を竦めたくなるような扱いは、あるかな。

「じゃ、ワインをひと瓶貰おう」

 へいって上ずった声。

 ワインの方はもっと値が張るんだけど、混ぜ物よりかはマシだ。

 いあ、伏せた目の端に。

 奥から厨房の若いのが出てきて、飲み残しの麦酒を酒瓶に戻してたのを見れば。

 誰だって飲む気が失せるってもんだ。

「前金だ、多ければテーブル席の連中の驕りに」

 国王の横顔が刻まれた、大金貨を亭主に握らせる。

 細かいカネと言ったらそれしかなく。

「マジかよ?! ...っでもよお。これっぽち、カウンターに張り付いてる流れ者さんくらいで消えるぜ」

 足元を見られてるわけじゃない。

 物価がソコまで高騰しているということだ。

 金貨1枚の価値が銀貨数十枚まで下落している事実。



 研究棟に戻った賢者は、若い将校を捕まえる。

「この国は今、どうなっている!!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ