聖女連合軍、立つ! 6
『一刻の猶予もない』
勇者の消滅と世界の命運。
天秤に何を乗っけてるんだ。
『っ、もう。これでもうちょっとは焦ってくれても良くない!!! いい、勇者のひとりが“座”に戻ったのなら、こちらの理の縛りが弱くなったってだけで大した問題じゃあ、ないわけ。でも、これ、消滅しちゃったから...』
更に魔王ちゃんが補足してくれた。
「邪神の残滓が当てずっぽうに探らせてた遺跡の中に、自身の信者らが創造した生贄の祭壇を見つけた。強く念じ、想像し、崇拝することで空虚な妄想からでも“神”は生まれるってのは、神々の世界では常識でね」
ん?
じゃ、じゃあ、紅の後輩があたしの洗濯物を後生大事にしてるって話。
「ひとり信者じゃでは発生しないけど。イキガミとしてのセルがいるし...もしかすると祭壇に、ね。いるかもだね!!」
全然、嬉しくないんだけど。
◇
想像してみよう。
祭壇に祀られてる“あたし”は、果たして服を着せられているのか、素っ裸なのか。
後輩のことだ。
ま、きれいさっぱり全裸で間違いはない。
神さまをオカズによろしく妄想して――
たく、なんてことだい。
じゃ、じゃあ。
あたしは何の権能を持つって言うんだ?!
パンツで生まれた神さまだろ。
洗濯物を奇麗にする御力。
ま、それは悪くない。
「セル? バカな思考を駄々洩れさせないで。わたしも共有するから」
あ、ご、ごめんなさい。
「――っでも、女神」
『そこは敬う心をもって、乙女神か...あるいは、お姉ちゃんでもいいんだけど?』
どの口が言うか。
全知全能を気取って、あたしを“まな板”呼ばわりしてたじゃんか。
『いあ、セルちゃんふたりに睨まれると、なんかテレちゃうなあ。あ、でも、でもね、世界の天秤が傾いたのは確かなの!! 平和か、或いは戦争か。...た、確かに戦争は方々で起きてるけど、地上に息づくそれぞれの種に関わる大惨事ってのは、さ。終末な訳で』
もやっとしてんなあ。
「まあ、要するに。世界は生まれた瞬間から常に膨張し続けてるんだよ。こう、豚の腸袋に肉じゃなく息を吹き込むように、ぷくーって。いつかはその膨張効果が無くなる時が来る!!」
「そっか、破裂しちゃうもんね!」
あたしにしては冴えてた。
ま、“魔王”ちゃんに誘導して貰ったからだが。
確かにいつかは終焉が来るんだろうけども。
「それが今! ぢゃないってこと?」
乙女神は激しく否定した。
ゆたかなたわわを揺らしながらだが、こいつは喧嘩でも売ってるんか。
『ちょ、殺気、殺気が怖い。ほ、ほら、女神のプレゼンには殆ど裸体っぽい服装は必然なの!! えっと、ホタテ貝だかアコヤ貝をバックに、大事なとこだけ隠して信者の前に現れるのに... 貧相だと勃た無くなるでしょ? こう、創作意欲と言うのがさ』
こいつはグーで殴り殺す。
「セル、ステイ!!」