聖女連合軍、立つ! 3
「勇者召喚が“世界を正す”と?!」
あたしのお爺ちゃん、ホーシャム・ロムジーの驚き。
どんな特権的なステータスを持っている人でも、瞬きのような一瞬の人生のなかで。
神の存在を肌で感じることは稀に違いない。
生涯の中で“ステータス”なんて叫ぶことがあるだろうか、否、否である。
冒険者登録したら、与えられるものだと思っている。
「だが、邪神の出現が公になったのはついぞ最近」
そう。
勇者誘拐の裏で暗躍してたのが、邪神教って流行りもしない有象無象。
お爺ちゃんが命からがらの果てに助けを求めたから発覚した。
「時系列的に、は...です」
まだ口を尖らせてる蒼炎の魔女。
大人げないなあ。
「教会だけが悪者にみたいに扱われているのが気に食わないです」
それは、また。
ヒルダさんが問い詰めなかったら口も割らんだろ。
「あのゴーストタウンには、ネイザー・ヘドンが居たんですよ!! 魔法詠唱者協会のエージェントが。正教会は乙女神の動向を探っていて、ここだ!って当たりを付けましたが。じゃあ、彼らはどうやって? デス」
ま、まあ。
言われて――いや、マジでネイザーさんが居たん?
その痕跡という状況証拠だけど。
居なかったとも言い切れない。
◇
ま、難しいことは考えないことにする!
あたしが能天気な表情に変わったのを周りが目撃して――。
「よし、先ずはメシだ」
ここゴーストタウンですが。
逞しい師匠がノラ牛を指さしてて、
「あれも食えるよな?」
えー。
聖女軍となった大所帯。
ゾンビの躯は早々に片付けて、いくらか原形をとどめてる家屋に引きこもり。
とりま、それぞれの拠点として。
村の広場に集まってみた。
蒼炎の魔女が鍋? 鍋? ...これ、毒薬でも作るような鍋だよね?
「ま、まあ作らないとは嘘になりますけど。雑炊だって作るんで、いきなり苦しんで倒れるなんてありえません。ちょ...ちょっとはきゅ~んって泣くかもですが」
えー やだー。
紅の後輩も鍋を、待てこら!!
それは騎士団の盾じゃなかろうかい。
「ええ、盾の掴み手の皮紐を外せば。それなりに肉も灼けると思います」
汗臭そうですけどね。
これ以上、肉を臭くしないでほしい。
「なら、儂の剣で」
お爺ちゃん!!!
もう、この人たち、自由人過ぎる。
魔王ちゃんと、エルダーク・エルフの5人も焚火を囲む。
健在な家屋から鍋を探してきたらしく。
手持ちのラードを薄く切り落として、干し肉がするっと滑っていった。
つるん、つるん。
なんか...
「セルはわたしと... 食べる?」




