聖女連合軍、立つ! 2
さてどこから。
勇者が召喚された時、教会には乙女神の行動を監視している者たちがある。
世界を見通す為の特殊な能力とスキルに目覚めさせた、特別な人々――当人の目を覆い隠して、額に見開いた目の入れ墨が施された女性たち。
両腕を肩から落として、蛇か獣かのキメラにさせられた者たち。
知覚に全振りしたような偏ったステータスだからこそ、神々の行動を顕わに出来る。
まさか。
そのまさかな、能力者が叫んで告げた――勇者が、消えた。勇者が死んだ! と。
勇者の存在は。
この世界に“神”があるという具体的な例だ。
教会は召喚された勇者を象徴として守る義務が生じる。
と、いうか...
その象徴こそ、神秘なのだと考えている。
女神正教会の神秘の隠匿。
乙女神が何故、召喚したかの目的も知ってて隠匿しようとした結果。
人知れずに勇者は誘拐された。
◇
ちょっと待って。
「っ、待てよ?! 正教会は勇者が召喚された目的と、存在、または召喚された地までもを正確に把握してたって事か!!!」
ヒルダさんの上半身パジャマ姿。
ワンピースみたいになってるから、びしょびしょに濡らされたズボンの代わりを履かなくてもセーフ。
今は自前の見せられないショーツだけだ。
「ええ、正確と言っても。誤差くらいはありますけど」
蒼炎は口をとがらせてるけど。
紅は饒舌だ。
黙してやり過ごす場合じゃなくなった。
「しかし、何故、話す気に?」
ミロムさんも問う。
神殿騎士の老騎士長なんかキョロキョロしてる。
話についてけないどころか、状況にもついてけないようだ。
気が付いたら冒険者も混ざってるし。
大所帯になってた。
「ちょ、ちょっといいか?」
冒険者のシルバーチョーカーさん、はい。
挙手制じゃないが。
「正教会が神にも疎まれてるのは、神秘の隠匿だと思ってたんだが?」
それはひとつの側面みたいなトコだろう。
「私たちも、枢機卿によって働かされて側だから詳しくは知らない。巫女を介して、乙女神の行動の一部が見えるというのなら... 話は別かしら」
尖った口で、蒼炎が告げた。
彼女も2度、風呂に入り直して――
ヒルダさんみたいなパジャマ姿だ。
これ、何着あるの?
「セルは黙っててね」
魔王ちゃんに『肩をポンポン』された。
「先輩に隠し事が...... したくなかった、から」
後輩が帰ってきた気分。
こんな事件に巻き込まれるよりも前。
あの街でバカをしてた頃の。
「――それと、勇者召喚の目的が世界を正すものだという事です」
正す?
邪神は目の前の脅威であろうから当然、討伐対象だろう。
あとは...
あたしの目が魔王ちゃんに向けられる。
彼女は微笑みを浮かべて、口元にひと指しゆびが立つ。
あ、これ“しぃー”ですか、そうですね、はい。