邪神と勇者と... 3
勇者たちは言わば、半分神さまみたいな状態になっている。
乙女神によって世界の理屈をひん曲げて、召喚したわけだから加護というよりも、だ。
半分か、或いは4分の1くらい神である可能性があって。
強力な相反発する神力があれば、
勇者の半神化はかき消されてしまう理屈だ。
ただ、いつまでそんな強力な力を注げるかは、注いでる本人でもはっきりと分かるわけもなく。
邪神は勝手に弱体化したというわけで。
さて。
力のシーソーゲームにもそろそろ陰りが見えてきたところで。
事態も動き出す。
あてずっぽうも数うちゃ当たるって理屈。
いや、もう博打だから。
散々ファンブル引きまくった邪神側に、だ。
ツキが回って来ただけだろ。
大きく張るか、小さく張るか。
サイコロ目の一発勝負。
◇
ビッチと同時期に召喚されたジジイが鉄の檻から引き出されたとこ。
みんなで押し潰してたのも祟ってか、勇者の再覚醒に聊か時間が掛かってる。
もしも6人全員で再覚醒していれば。
この残滓なんてあたしらが彼らを助けるなんて行動さえ、必要なかったかもしれない。
「ちょ、こんな年寄りにな、何を、するんじゃ!!」
小突かれただけで、膝から崩れた。
プルプル震えながら立ち上がって、直ぐに壁にもたれ掛かってた。
腰に力が入らない。
「――てか、他のお前らも抗議せぬか!!」
檻の中の勇者5人はじっと、ジジイを見送ってる状態で。
ビッチの方は安堵の色も見せている。
身の危険が確かにあったから。
「ま、あいつらが薄情だなってのは、同情してやる」
頷かれ、慰められて、棒の先で突かれて歩くよう強要された。
ジジイが向かうは祭壇だ。
とうとう準備が整ってしまったのだ。
異界から邪神の本体を呼び出す。
完全ではないだろうけど、力の一端でも神降ろしが出来れば狂信者たちは納得するのだ。
彼らの望むべく世界に成らなくても。
今よりかは少しマシになると。
「ワシはどうなるんじゃろな?」
「前にも言ったと思うが、この世界にある主神から力を分けられた者だ。また、別の世界から呼び出された時に膨大な魔力も浴びている。境界に穴をあける為にもその為の供物が必要だろ?!」
生贄とは、まあ、そういうこと。
確かに残滓が勇者を取り込んだところで弾かれて終わるだろう。
6人の力に圧倒していた頃とは明らかに違うのだから。
「なんじゃ、もっとしわくちゃに成れと?」
「いや、ミイラくらいに成るんじゃね」
養分を吸いだされたら、まあ。
そうなっても。
嫌がるジジイが祭壇へ。
異界語を唱える術師たちの胸中『なんでまた、こんな老いぼれを』過っていった。
「さあ、神降ろしだ!!」




