ゴルゴーンと、 2
アイヴァーさんと子犬、ゴルゴーンの姐さんたちがシグルドさんと合流できたのは。
さらに2日かかる。
燃えた痕跡が残る例の郷の入り口で。
犯行に及んだ結社の刺客たちは姐さんたちの手で露払いが行われ。
生かしておいた捕虜も。
「すべて死んだ?!」
自害だ。
魔法による拘束だと、物理的な干渉がすべて無駄になる。
拘束魔法の対象保護はきわめて強力だ。
なにせ、大概の種族は死にたがり屋なので、こういう条件が付与される。
「オオカミだけが異常なんだ」
「なんだ、突然に」
シグルドより年長のアイヴァーが、ゴルゴーンに問うた。
いや突っかかっていった雰囲気。
「捕まったら、仲間のことを謳ってしまうかもしれないって言う考え方だ。刺客は、仕損じたら次が無いくらいの覚悟で臨み。捕まりそうな状況であれば、自死も厭わず実行しろ... その覚悟で動け!」
ドライ。
いや、冷たいかもしれないけど。
そうした死にたがり屋の為の拘束魔法なのだ。
で。
拘束魔法の対象者保護条件は、魔法干渉だって赦さない。
「秘密結社、いや... 騎士団の残滓どもは生き恥を是とする人種族にしてはドライ。この潔さ、竜人にも勝る、恐ろしさがあるか」
ドラゴンの眷属か、祖とする亜人種は高潔な持ち主が多い。
なかでも竜人族はイカれてて。
そもそも刃が通らない腹に短剣の刃でも立てて、
『――っ、無念! 口惜しいがこれもけじめ、ここで見事腹をば掻っ捌いて果ててしんぜよう!!!!!』
なんて吠える連中だ。
失敗の大小は関係ない。
兎に角、すぐに指を詰めようとして。
持ち込んだ短剣が刃から折れて宙を舞うのだ。
『無念、無念だー』
と、嘆く面倒な連中である。
◇
ゴルゴーンの治癒士は、死体検分も出来る。
「拘束魔法をトリガーとした自死だそうだ。襟元や、脇の下に口の中など... 考えられそうな隠し場所は、かつての服毒自殺の時と変わらんようで。竜人族の奴らが参加してたら、生き証人が死んだのは己らの不甲斐なさだと言って、刃が通りもしない短剣でもって死にたがり屋を演出して、すこぶる騒いでたであろうなあ」
リーダーの妙齢な女性は、肩を落として息を吐く。
燕尾服の少女ナシムが駆け寄り、蛇女の彼女たちに抱き着いて。
懐かしさと甘えた声色で、
「姉さまだー!!!」
巨躯の上半身が人で、下半身が蛇に見えるゴルゴーン族。
「少女も、蛇女に成るのか?!」
シグルドさんに問う。
小声だけど。
マディヤが己の“たわわ”を押さえつつ、アイヴァーさんに近寄って行ったとこで。
アグラに突き飛ばされ、
「ナシムだけじゃねえ。あれら姐さん方も、普段は蛇じゃねえぜ」




