ゴルゴーンと、 1
各地に点在してた“隠れ郷”が狙われた。
アイヴァーやシグルドのような、ツーマンセルで行動するオオカミたちの拠点。
魔界から出ている戦力は、当事者も正確には把握していない。
仮に捕まった時、
敵勢力に捕捉されかねないからだが。
こういう未曽有の危機のなかでは、猫の手も借りたいのに。
把握が困難なせいでハトだよりになる。
◇
ゴルゴーン族には男の戦士がいない。
アマゾネスな構成で、他からオスを調達して種付け行為に至る。
オスは皆で交互に使って大事にするんだけど。
強い戦士が生まれなければ、子ヘビのエサにされる。
「――なんか、凄く怯えた目で見てるんだけど?」
子犬がだ。
魔狼、人狼族の子供たちには、躾の為にゴルゴーン族の男漁り、男狂いが語られる。
その刷り込みが残ってる子犬は。
腹の下に尻尾を丸めて、きゅ~んってなか細く鳴くのだが。
怖がらせている原因が目の前に。
アイヴァーさんも、こればかりはどうしようもなく。
「姐さんたちが怖いとさ」
大人のオオカミに匹敵する体躯で、いや。
より大柄な骨格と“たわわ”がある。
戦闘で身を捩ると、逆方向へ揺れるほどの実だ。
腕の筋力も尋常じゃない。
肩幅が広く、背中の広さなんて魔狼の戦士よりも大きい。
魔界の重戦車並みの巨漢だが。
「今、何かと比べたか?!」
察しの良さは女性特有の繊細さがある。
おっと、レディに失礼しまくりです、アイヴァーさん。
「ところでオオカミ」
「へい」
焚火の周りに集まり暖を取る。
アイヴァーさんもオスだから目のやり場に困り、返事もどことなく気が乗らない。
彼を助けたのがリーダーなのだろう。
彼女が指図して、蛇女たちは外套を着てくれた。
「シグルドというオオカミは、知っているか? このあたりの隠れ郷にまで案内してくれ」
「ああ、シグルドは俺の連れだ。あいつに何かあったのか?!!」
少しだけ語気が強くなる。
揺らぐ影を撃退したほどの戦士が数名。
いや、リーダーである彼女も相当な場数を踏んだ剣士だってわかる。
だから仇を打とうとか、そういう気にはなれないけども。
子犬を抱いて逃げるくらいの。
「いや、待て待て。こっちは何もしていない!! 現実にお前の窮地を救ってやったばかりじゃないか」
他人の話は最後まで聞こう。
オオカミはせっかちというイメージが上書きされた。
各地でも同じような点で書き換えが起きてて。
勝手に早合点するきらいがあるようだ。
「ツーマンセルも大概にしろよ!!」
ハトと言う連絡手段の幅広い活用をレクチャーされ。
シグルドが、この先、2日ほど離れた村に滞在している情報が共有された。
ゴルゴーン族が協力している理由や。
この先の共闘も、或いは結社だけでなく騎士団との戦いでも。
一族だけでなく主神の御力まで借りれるかもしれない、朗報を。
口汚いババアに報告する筈だった――。